( ^ω^)ブーンが特殊部隊になったようです
53 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 21:08:20.28 ID:+mK/sF7d0
chapter10.合流

―――ランリッツベルグ・南西ブロック―――


从゚∀从「リロード!」

('A`)「了解!」

ドクオとハインリッヒは、現れる敵を狙撃しながら、少しずつ後退していった。
何しろ2人きりで抑えているから、隙は最小限にしないといけない。
そこで片方の弾倉交換の時にもう1人がカバーする。
200発の弾丸を撃ちつくしたハインリッヒは、予備の200連発ベルトを取り出し、MINIMIに装填する。
M4より時間がかかる為、ドクオは手榴弾を投げて敵をけん制する。
敵には多数の敵がいると錯覚させられるだろう。

从゚∀从「装填終わったー」

('A`)「下がるぞ」

多数の敵には、より多数でかかれば勝てると思った敵は、さらに数を増して来た。

56 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 21:11:06.22 ID:+mK/sF7d0
ドクオ達はまた後方に下がる。追いすがるようにRPGロケットが飛んでくる。

('A`)「伏せろ!!」

ロケット花火を巨大化させたような音を立てて、地面に突っ込んだ弾頭は爆発して、土を巻き上げる。
その後に降ってくる土塊のシャワーを浴びながらドクオ達は撃ちながら下がる。
重たいMINIMIを抱えて撃ちまくるハインリッヒに疲労の色は見えない。
小柄な身体だが、タフネスは他の隊員に劣っていなかった。

从゚∀从「こんちくしょーい」

マズルフラッシュの向こうで、敵が倒れる。
ハインリッヒは撃退スコアをまた伸ばしていった。


58 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 21:15:53.20 ID:+mK/sF7d0
―――ランリッツベルグ・北西ブロック―――


(  ゚∀゚)「HQ、こちらジョルジュ。まもなく墜落地点だ」

2人を残して先行したジョルジュ達は、墜落地点の南50m地点まで到達していた。

( ∵)「ショボン、機体の周りに敵は?」

(´・ω・`)「ちょっと待ってて」

ショボンが身を乗り出し、スコープで墜落地点周辺を偵察する。
機体周辺には数人の武装したテロリストと、騒いでいる民間人が見えた。
特にクルーが何かされている様子は見えなかった。

61 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 21:18:53.71 ID:+mK/sF7d0

(´○ω・`)「敵が・・・10人くらいかな。非武装が30くらい?」

( ゚д゚ )「意外と少ないような」

(  ゚∀゚)「よっしゃ。武装した方をやるぞ。各自散開して位置についたら報告。ショボンはできるだけいい位置を選べ」

( ∵)( ゚д゚ )(´・ω・`)「了解」

4人は忍者のように、気付かれないようにしてゆっくりと前進した。
ショボンはビルに上り、屋上から墜落地点の広場を見渡す。
何人かはヘリの中を漁っている。

(´・ω・`)「ショボン、スタンバイ」

( ∵)「ビコーズ、スタンバイ」

( ゚д゚ )「ミルナ、スタンバイ」

(  ゚∀゚)「よし、合図で一斉に武装した奴だけをやれ。武器を取り出すようなら民間人も撃て」
(  ゚∀゚)「いくぞ・・・」


63 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 21:23:09.54 ID:+mK/sF7d0

広場には武装兵と野次馬がいた。
野次馬は熱狂し、ブラックホークに蹴りを入れていたりした。
子供からお年寄りまでがニューソクに対する罵倒を叫んでいた。
突如銃声がした後に、武装兵は次々と頭を撃ちぬかれ倒れた。
さっきまで騒いでいた野次馬達は一瞬で静まり返り、事態を把握してから、また大声を上げて逃げだした。
落ちた銃器を拾おうとした者もいたが、腕を撃たれてからは拾おうとする者はいなくなった。

(  ゚∀゚)「もういいか?」

3人はじりじりと機体に近寄ってゆく。が、機体の後部キャビンから猛烈な銃撃が加えられる。
3人はとっさに遮蔽物の陰に隠れて避ける。反撃しようとしたが、絶え間ない射撃が続き、うかつに身体を出せなかった。
敵にしてみれば、仲間があっという間に葬られたのだから、一度反撃のチャンスを与えたなら自分達がやられてしまうかと
思っているのだろう。
ショボンがビルの上から狙撃を試みたが、、敵はショボンにも気付いたようで、ショボンにも制圧射撃をかけてきた。

( ∵)「何だ?奴らM16を使ってる!」

( ゚д゚ )「ヘリの中のを使ってるんですかね!」

銃声から判断するに、恐らく敵は機内備え付けのM16を撃っているようだった。
逃げるときにギコ達が置いていったものだった。弾薬はたくさん積んであったから、しばらく切れそうになかった。


64 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 21:26:14.00 ID:+mK/sF7d0

(  ゚∀゚)「どうするよ?手榴弾ぶち込んで黙らすか!」

( ∵)「バカ、それじゃ機体も壊れるだろ。乗員がいたら彼らも死ぬぞ」

(´・ω・`)「スタンを使えば?」

(  ゚∀゚)「その手があったな。ミルナ!」

( ゚д゚ )「はい!」

(  ゚∀゚)「合図でスタンを投げ入れろ。俺たちが援護する」

( ゚д゚ )「了解しました!」

(  ゚∀゚)「3・・・2・・・1・・・行け!」

ビコーズとジョルジュ、ショボンは一斉に射撃を開始して、逆に敵の頭を抑える。
その隙にミルナが躍り出て、閃光手榴弾のピンを抜いて投げ込む。
屋外であっても、至近距離で爆発すれば閃光手榴弾は抜群の効果を発揮する。
ジョルジュ達の動きを見逃さんと見開いていた目は焼かれ、視力を一時的に喪失する。
チラリと覗く頭部を、ショボンが見逃すはずもなかった。


66 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 21:29:49.39 ID:+mK/sF7d0

(´○ω・`)「ご愁傷」

2発の銃声がした後は、機内からの銃撃がぴたりと止んだ。
ジョルジュが近寄って確認すると、機内で2人の男が死んでいた。

(  ゚∀゚)「よし、このまま機体周辺を警戒してくれ。ショボンは降りてきていいぞ」

ジョルジュはブラックホークの中に滑り込み、機内の様子を観察する。
今しがた倒した敵の血と、ジョルジュ達は知る由もないドアガンナーの血が、横倒しになった床に付着していた。

(;゚∀゚)(クルーが居ない・・・?)

機内には、脱出したギコとしぃはもちろん、残してきたはずのドアガンナー2人の遺体もなかった。
不審に思ったジョルジュはツンに通信する。

67 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 21:32:55.02 ID:+mK/sF7d0

(  ゚∀゚)「HQ,こちらジョルジュ。墜落地点を確保した」

ξ゚听)ξ「HQ,了解。クルーの安否は?」

(;゚∀゚)「それがな・・・もぬけの殻なんだよ。これだけ派手に落ちて歩き回れるとも思えないが・・・」

ξ゚听)ξ「・・・脱出した痕跡はありませんか?」

(  ゚∀゚)「わかった。探してみる」

ジョルジュはコクピット周辺を見る。シートベルトは外されていた。これは脱出した可能性があった。
むりやり連れ去られたのなら切られているだろう。
さらにキャビンに戻ると、救急セットが目に付いた。幾らか医薬品が使われた形跡がある。
これも、無理やり連れ去られたと見るには怪しかった。わざわざ手当てをして連れ去るものだろうか。
極めつけはガンケースだった。アサルトライフルはさっきの敵2人が持っている。
しかしサブマシンガン2丁と弾薬が無い。

(  ゚∀゚)「・・・ひょっとしたら脱出したかもしれんぞ。銃が無くなってる」

ξ゚听)ξ「1人は墜落前に死亡したとの報告が入ってます。それなら残った3人は脱出したかも知れません」

(  ゚∀゚)「・・・そうか。機体はどうすればいい?」

UH-60Kブラックホークは、特殊戦仕様の最新型で、墜落機体から機密情報が漏れ出す恐れがあった。
それがテロ組織経由でラウンジに流れるのは厄介だった。


69 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 21:34:33.66 ID:+mK/sF7d0

ξ゚听)ξ「クルーがいないのなら、爆破して隠滅してください」

(  ゚∀゚)「了解。通信を終了する」

ジョルジュはもう一度機内を見渡した。何度も乗ったブラックバード。
もう動けない黒鳥にしてやれるせめてものことは、火葬してこれ以上惨めな姿を晒さないようにしてやることだった。

(  ゚∀゚)「・・・貰えるもんは貰っておくか」

ガンケースにあったM16の弾倉を2、3個掴んで外に出る。ミルナとビコーズに弾倉を手渡して、焼夷手榴弾を取り出す。

(  ゚∀゚)「あばよ。ご主人様はきっと見つけてやるよ」

焼夷手榴弾を投げ込んでしばらく後、テルミットが爆発し、3000度の高熱でブラックホークは燃え始めた。
機密部品から何から、全てを燃やし尽くしていく。

( ∵)「とりあえず移動しよう。炎が目立つ」

(  ゚∀゚)「・・・そうだな」

真っ暗な街の中、赤々と燃える炎が、4人の影を浮かび上がらせていた。
4人の影は、どこかへと消えていった。

71 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 21:37:34.68 ID:+mK/sF7d0
「・・ちゃん・・・ヘリカルちゃん・・・!!」

*(‘‘)*「うん・・・」

ヘリカルは、自分の名を呼ぶ声で目が覚めた。どうやら失神していたらしい。
目を開けると、よく知った近所の婦人の姿が見えた。

*(‘‘)*「・・・おばさん?」

「ああ!よく無事だったねえ!!」

ヘリカルにいつも良くしてくれていた婦人は、何がなんだかわからないヘリカルを抱きしめる。

*(‘‘)*「え?え?」

「無事でよかった!ニューソクのやつらめ!こんな可愛い子に手を出すなんて!」

*(‘‘)*「え!?」

ふと周りを見ると、先ほどヘリカルに襲い掛かってきた男の死体が運び出される所だった。
婦人はヘリカルのほほを優しくなでる。男に殴られた時に切った口の中が痛む。


72 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 21:38:31.46 ID:+mK/sF7d0

「助けに来た人も殺されて・・・さぞや怖かっただろうねえ」

ここで、ヘリカルはやっと何があったのか思い出した。

突き飛ばされ、尻餅を付いた自分に銃を向けたギコ。
そして閃光が走り、恐怖で失神したのだった。床を見れば、自分を避けるようにMP5の弾痕があった。

*(‘‘)*(これは・・・)

「あいつらはどこに行ったんだい?」

*(‘‘)*「えっ」

「捕まえて懲らしめてやるのさ」

*(‘‘)*「・・・そこの窓から」

ヘリカルは自身の後ろの窓を指差した。
逃げる際に開け放って行ったのだろうか。ヘリカルはあえて嘘をついた。
何故嘘をついたのか自分でもわからなかった。


2 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 20:14:28.42 ID:cKUyZplE0

(*゚ー゚)「本当に良かったんでしょうか?あんなことして」

( ,,゚Д゚)「・・・あれくらいのほうがリアリティがあるだろよ」

2人は、家屋の屋上にかかる細い通路を這っていた。ヘリカルが言うには、火災時の避難経路として作られたらしい。
3階建ての家同士を人一人がやっと通れるかという、管のような通路があったのだ。
上半分は大きく開いていて、立てば通行人から丸見えだったから、這って行くしかなかった。
かなり長く放置されていたようで、埃と汚れにまみれている。

( ,,゚Д゚)「あの子が元気でいたら、疑いの目を向ける奴も出てくるしな」

(*゚ー゚)「だからって失神させなくても」

( ,,゚Д゚)「いいんだよ。ほら、次を左だ」

通路は、ヘリカルの家から東に伸びたあと、北にも続いていた。
一旦通路を降りて、見つからないように素早く北向きの通路に潜り込む。
どこへ行けばいいのかは分からなかったが、とにかく離れたかった。
2人は黙って這っていく。北向きに延びる通路は、また東に曲がる。
次が終着点のようで、通路は通りをまたいで、大きな屋敷に続いていた。
2階建ての屋敷で、草木の枯れた庭が柵で囲まれていて、明かりはついていない。

3 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 20:17:19.65 ID:cKUyZplE0
通路の終わりには、小さい屋根が付いた木製の床があった。
ちょうど天体観測でも出来そうな広さで、2m四方の床の真ん中には扉があった。
とりあえずしぃを降ろして座らせる。

( ,,゚Д゚)「さて・・・開けばいいんだが」

ギコが扉の取っ手を掴んで引き上げる。初めは動こうとしなかったが、力を込めるにしたがって徐々にずれていき、
やがて開いた。少し錆付いていたようだ。

( ,,゚Д゚)「ちょっと中の様子を見てくる。待ってろ」

ギコは音を立てないように着地した。埃が舞い上がる。部屋中が黴臭い。
真っ暗な中、廊下を探って、階段を探す。ペンライトで探りながら進む。
建物自体は豪華なつくりだったが、それに見合う調度品や家具、絵画の類は一切無かった。
あるのは古く汚い家具が数点だった。広い屋敷がさらに寂しく感じられる。
やがて、階段を見つけて1階に降りた。大広間はがらんとしている。
窓は閉まっていて、室内は真っ暗だ。人の気配はどこにもなく、空き家だった。

6 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 20:20:40.05 ID:cKUyZplE0
( ,,゚Д゚)「あの子の言ったとおり空き家だったな」

暖炉には蜘蛛の巣が張っている。テーブルの上をなぞると指に真っ白な埃が付着した。
まるで幽霊屋敷だった。そんな場所でも、敵から身を隠してくれるという点で居心地がよく思えた。
もっとも、救援が未だに来ないと言う事実は変わっていなかった。

( ,,゚Д゚)「さて、しぃを降ろしてくるかな」

誰に言うでもなく独り言を言う。やはりこの雰囲気の中1人は怖いのか。
足を踏み出したその時、外から音が聞こえた。

( ,,゚Д゚)「ヘリか?・・・アレは!!」

ギコは2階の窓に駆け寄り、空を仰いだ。
北の方角から、ともすれば見逃してしまいそうなほど小さな影が近づいてくる。
機体の大きさ、小さめのローター音。それはパイロットのギコにはすぐに分かった。


7 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 20:24:54.59 ID:cKUyZplE0

( ,,゚Д゚)(リトルバードだ!!)

飛来したリトルバードは、高度を下げながら、屋敷の東の方に進んでいく。
それは着陸するときの動きだった。
ギコは確認するが早いが、しぃの元に走り出した。

(*゚ー゚)「中尉、ヘリが!」

( ,,゚Д゚)「ああ、俺も見た。チームVIPの奴らだ!」

ギコは息を整えるのも忘れて、ポケットの信号弾の発射筒を取り出す。
遭難したときに、救援部隊に自分の位置を知らせるための物で、打ち上げ花火を想像すると分かりやすい。
ふたを開け、点火しようとしたその時、しぃが慌ててギコを止めた。

(*゚ー゚)「ちょっと待ってください!」

( ,,゚Д゚)「何だ?早くしないと俺たちを見失っちまうぜ!」

(*゚ー゚)「でも、敵にも気付かれます!」

( ,,゚Д゚)「あ」

9 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 20:30:20.05 ID:cKUyZplE0

打ち上げ花火と違い、信号弾は到達する高度も、光のまぶしさも大きかった。
それは救援部隊が見つけやすいということでもあったが、同時に敵にも見つかりやすいということでもあった。
いや、見つかりやすいというよりは、確実に見つかるだろう。
自殺行為だった。

( ,,゚Д゚)「そいつを忘れてたぜ・・・」

(*゚ー゚)「見つけてくれるのを待ちましょう。近くに来たら何らかのアクションを起こせば・・・」

( ,,゚Д゚)「いや、それもダメだ」

(*゚ー゚)「何故ですか?」

( ,,゚Д゚)「俺たちがやられたのが北東ブロックだ。さっき見た限りだと、あいつらも北東ブロックに着陸した」
( ,,゚Д゚)「時間がかかるとあいつらも危険だ。早いとこ誘導してやったほうがいいだろ」

(*゚ー゚)「問題は、彼らが来るまで持ちこたえられるかどうかですが・・・」

( ,,゚Д゚)「そこは何とかする。鍵もかかってるようだしな」

(*゚ー゚)「・・・分かりました。どうせここで待ってても分かりませんよね」

( ,,゚Д゚)「そういうことだ。これはギャンブルだぜゴルァ」

ギコは点火作業を再開した。発射等側面のカバーを剥ぎ取り、ふたの天辺をこすり付けて点火する。
筒先を上に向けて、数秒の間を置いて信号弾が射出される。20mほど飛んだ信号弾は、ギコ達の存在を明確に指示する。


10 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 20:37:10.52 ID:cKUyZplE0

( ,,゚Д゚)「よし、中に隠れるぞ」

ギコは先に飛び降り、後から入ってくるしぃを受け止める。
そして2階の北西角部屋に入って、窓から外の様子を窺う。
数分が経つと、発射地点を特定した人間がちらほら集まってきた。さらに10分後、今度は銃を持った者が集まってきた。
相手が銃を持っていることを知っているためか、なかなか屋敷の敷地内に入ろうとはしなかった。
恐らく、人数が集まるのを待って一気に攻めてくる算段だろう。
救援が待ち遠しかった。

11 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 20:40:55.41 ID:cKUyZplE0
―――ランリッツベルグ・北東ブロック―――

「降りるぞ!3秒で済ませろ!」

( ^ω^)川 ゚ -゚)「了解!」

攻撃される時間を最小限に滑るため、まるでスキージャンプのように着地する。
地面にスキッドが着くか着かないかの内に、ブーンとクーは素早くリトルバードから飛び降りる。
2人が降りたかどうかを確認することも無く、リトルバードは再び舞い上がっていった。
スキー場のリフトのようにも思えた。

「オスカー23よりHQ,2人は降下した。上空より援護する」

リトルバードは上空から、赤外線カメラで2人の後を追う。
ナビゲーションと、2人という監視能力の弱さを補うためだった。

15 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 20:44:17.00 ID:cKUyZplE0

川 ゚ -゚)「異常ないか?行くぞ」

( ^ω^)「分かったお」

2人は西に向けて走り出した。墜落地点を目指して行けば、ギコ達が東に向かっていったとしても発見できるかもしれなかった。
M4を構え、急ぎながらも周囲の警戒は怠らない。
ゴルフ12が撃墜された、とのことで、敵がいることを警戒してはいたが、予想と違って人気はない。
実はドクオ達のいる南西ブロックに集中していたのだった。

川 ゚ -゚)「人がいないな。都合がいい。一気に走るぞ!」

( ^ω^)「おk。・・・あれは!?」

ブーン達の前、ビルの向こうから、一筋の光が立ち上った。
20mほど上昇し、炸裂して一際大きな光を放つ。

川 ゚ -゚)「信号弾だな」

( ^ω^)「きっとギコ達だお!」

発射地点はそう遠くなかったが、ビルの陰から発射されたようで、ブーン達からは見えなかった。

16 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 20:45:35.99 ID:cKUyZplE0

川 ゚ -゚)「オスカー23、今のが見えたか?」

「・・・見えたぞ。そこから西に1kmくらいだな」

川 ゚ -゚)「案内してくれ。多分敵も見てたはずだ」

「・・・了解」

再びブーン達は走り出した。暗い街中を2つの影が通り過ぎていった。

17 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 20:50:14.14 ID:cKUyZplE0
―――ランリッツベルグ・北西ブロック―――

( ;,゚Д゚)「おいおい、どんどん増えてきてるじゃねーか」

(*゚ー゚)「これはダメかも知れませんね・・・」

南側の窓から外を見てきたギコが帰ってきた。
顔には絶望の色が浮かんでいる。敷地内に入る門がある南側には、かなりの人数が集まっていた。
懐中電灯で窓を照らして様子を窺っている者もいた。ギコも危うく見つかりそうになり、逃げ帰ってきたのだった。

ダダァン

( ,,゚Д゚)(*゚ー゚)「いっ!!??」

ギコ達からは見えなかったが、外からAKを撃ちかけられたのだ。
続けてもう一発、今度は1階南側の窓を割った。ガラスの割れる音が聞こえた。
様子を見るためか、更にフルオートで派手に撃ってくる。次々とガラスが破られる。


18 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 20:53:24.55 ID:cKUyZplE0

( ,,゚Д゚)「しぃ、お前はそこのタンスの陰に隠れてろ!」

(*゚ー゚)「中尉はどうするんですか!?」

( ,,゚Д゚)「反撃してくる!」

(*゚ー゚)「そんな無茶な!」

( ,,゚Д゚)「いいから隠れてろ!」

しぃを残して、またギコは出て行った。しぃは仕方なくタンスの陰に隠れる。
それは気休めのようなものであったが、兆弾くらいなら防げるかもしれなかった。


19 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 20:57:24.98 ID:cKUyZplE0

( ,,゚Д゚)「頼むから入ってくるなよ・・・」

ギコは身を屈めながら南の窓にたどり着く。ガラスが飛散していた。そっと目だけ出して外を窺う。
今まさに柵を乗り越えた男達が向かってくるところだった。

( ,,゚Д゚)(キタ━━━━━━(,,゚Д゚)━━━━━━ !!)

ギコは手元のMP5を見つめた。ここまで結構な数を発射した。
持ってきた弾倉は4本。もともと刺さっていた1本とあわせて、既に2本半を消費していた。
それはフルオートでばら撒いていたからというのが理由だった。

( ,,゚Д゚)「あいつらが来るまで持たせなきゃな」

ギコはセレクターの位置を「全自動」から「単発」に切り替えた。
これでは唯の命中精度の良い拳銃だが、この状況では仕方ない。
窓枠から身を乗り出し、侵入者に向けて撃って隠れる。命中は確認しない。
外からは「撃ってきたぞ!」「逃げろ!」などと声が聞こえる。
もう1回ちらりと覗く。慌てて退避する人々と、銃を取り出す複数の人影が見えた。

22 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 21:01:30.52 ID:cKUyZplE0

( ;,゚Д゚)「うわっ!」

AKの弾が集中して飛び込んでくる。ギコはたまらず身を伏せて、頭を覆う。
窓枠に残ったガラス片が砕かれ、降ってくる。

( ,,゚Д゚)「来るんじゃねええ」

今度は銃口だけを外に出し、散発的に発砲する。

ゴトリ

天井を向くギコの隣で、何か物音がした。

ミ( ,,゚Д゚)  占

黒いパイナップルのような物体。敵の投げ入れた破片型手榴弾だった。細く白煙が上がっている。

( ;,゚Д゚)「うっわああああああああ!!!!!!!!!」


24 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 21:04:57.01 ID:cKUyZplE0

死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!
ギコの脳内で最悪の結末がイメージされる。この事態をどうするか。
考える前に本能が反応した。MP5を投げ捨て、入れ替わりに手榴弾を引っ掴み、窓の外に全力投球する。

「ぎゃああああああ」

          「うわあ」


外から敵の悲鳴が聞こえ―――そして爆発音が被さった。
間を置いて投擲しなかった敵のミスだった。
飛散した鉄片が天井に突き刺さる。もし至近距離で爆発していたら。
ギコはこの日何回目かわからない脂汗を流した。
無我夢中でMP5を引っ掴み、威嚇程度に発砲しながら這ってドアを目指す。
ドアをくぐり、壁に背中を預けて息を整える。
汗がどっと噴出し、激しい動悸が止らない。

( ,,゚Д゚)(そういえばそろそろ四十路だったな・・・)

昔は何km走っても平気だったものだが。そんなことを考えながら、39歳のギコは手元のMP5の残弾を確かめる。
先ほどの戦闘で、弾倉半分ほど残っていた弾は、全て撃ちつくしていた。
舌打ちをして弾倉を取り替える。これで予備の弾倉は1本だけとなった。

26 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 21:07:36.12 ID:cKUyZplE0
それにしても、手榴弾を投げ入れられたということは、それが可能な距離まで接近された、ということである。
それなら、2人だけが接近してきた、ということはあるまい。次に考えられる事態は・・・

ドン!ドン!ドン!

( ,,゚Д゚)「こう来たか!!」

1階から大きな物音がした。外では、男達が木製の大きな扉を蹴破ろうとしていた。
ギコはすぐに1階に降り、階段の手すりを壁にして、屋敷南側の扉を睨んだ。
古めかしく、高級そうな木製の大扉が揺れる。
しかし、意外にも大扉は頑丈だった。破れそうで、破れない。何度か扉が軋んだ後、突然扉を叩く音が止んだ。

( ,,゚Д゚)「うん?」

ガシャアアアン!!

( ,,゚Д゚)「おうっ!?」

窓ガラスが崩れ落ちる。
どうやら敵は扉を破るのを諦め、窓から侵入することにしたらしい。
AK47の銃床が見える。人が通れそうな大きさの破孔をつくり、窓枠に手をかけて無理やり通ろうとする。
外からは暗い屋敷の中は見えなかったが、ギコからはその姿が丸見えだった。
ギコは膝撃ちの体勢で、素早く2回引き金を引いた。
安定した姿勢からの射撃だったため、9mm弾は難なく侵入しようとしていた男に命中し、男は外に仰向けに倒れる。


27 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 21:12:13.50 ID:cKUyZplE0

思わぬ反撃に驚いた敵はライフルを撃ちかけてくる。弾丸が室内を跳ね回る。
ギコは手すりに身を隠して避ける。

( ,,゚Д゚)(そう長くはもたんぜゴルァ)

MP5の、丸いフロントサイトを窓に向けた。
特に意識しなかったが、リトルバードのローター音が近づいていた。


34 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 21:23:22.06 ID:cKUyZplE0

「クー、止れ。南西に大きな屋敷が見えるか?」


( ◎ω^)          川 ◎-゚)∩

ギコがにらみ合いを続けているまさにその時、2人は屋敷の北東に着いた。
オスカー23から通信を受けたクーが左手を上げて制止の合図をする。ブーンが後ろを確かめる。
単眼式の暗視ゴーグルを付けて屋敷の北側を窺う。北側はポツポツとまだらに人がいた。
暗闇の中でも、電子増幅管によって映し出された緑色の視界の中に、はっきりと人を認識できた。
ただ、屋敷の周りの街灯で、さほどそれを使う必要は無かった。


35 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 21:26:15.66 ID:cKUyZplE0

川 ◎-゚)「オスカー23、屋敷南側に敵はいるか?」

「・・・屋敷南側に多数の人影を確認。南側からのアプローチは避けたほうがいいぞ」

川 ◎-゚)「了解。何かあったら教えてくれ。アウト」

クーは手招きしてブーンを呼ぶ。近づいたブーンと背中合わせになって指示する。

川 ◎-゚)「このまま屋敷の北側から救出に向かう。いいか?」

( ◎ω^)「把握」

ブーンは後ろを向いたまま答える。

川 ◎-゚)「お前は私を援護しろ。屋敷にたどり着いたら、今度は私がお前を援護するから来い」

( ◎ω^)「敵が何人かいるお。どうするんだお?」

川 ◎-゚)「私に任せろ」

( ◎ω^)「了解だお」

川 ゚ -゚)「久しぶりにコイツの出番か」

クーはヘルメットの前に付いた暗視ゴーグルを上にたたみ、サイドバッグからギャロットと呼ばれる暗殺具を取り出した。
といっても見かけは唯の金属製ワイヤーである。ワイヤーの両端に保持するための棒が括りつけられているだけの簡単なものだった。


37 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 21:30:09.63 ID:cKUyZplE0

川 ゚ -゚)「行くぞ!援護しろ!」

( ◎ω^)「おk、準備できたお」

ブーンがM4を構え、クーがギャロットを持って飛び出していく。
南側の人間は屋敷の方に集中していたし、非武装とは言え上空を飛び回るリトルバードも人目を集めていた。
暗闇を縫うようにして、屋敷の北にいた5人のうち、もっともブーン達に近い者へ近づいていく。
足音は立てない。どうやっているのかは分からないが、無音だった。
屋敷を注意深く観察する男の背後に近づく。近くで見れば、年のころはブーンと同じくらいだった。


38 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 21:34:49.36 ID:cKUyZplE0

川 ゚ -゚)(・・・)

一瞬で頸にワイヤーをかけ、キュッと締めながら背後に引きずり倒し、体重を利用しながら路地に引きずり込む。
通常、人の頸を絞めるには結構な力が要る。男でも、同じ体格の男を絞め殺すのは難しいし、
例えば殺人などにおいて、女性が頸を絞めて殺すのは力の弱い子供か、男でも寝込みを狙っての場合が多い。
その点、紐やタオルなどを使えばより簡単に絞殺出来るし、このギャロットを使えば更に簡単になった。
クーが力を込めると、細い金属ワイヤーは頚動脈を圧迫し、脳への血流を止める。
力が一点に集中して、頚動脈と気管の組織を破壊して、戦闘不能に陥れる。
最初はもがいていた若い男はすぐに動かなくなった。顔は紅潮して、頸に痛々しい一筋の跡が残っていた。
クーは路地から顔を出し、ブーンに向けて親指を立てる。

川 ゚ -゚)b                      (◎ω^ )

39 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 21:39:24.25 ID:cKUyZplE0

そのまま屋敷北側のビル壁に沿って次の目標に移る。
AKを腰だめに構えて、何やら叫びながら乱射している女だった。
年のころは、40歳を過ぎたくらいだろうか。次々とニューソクへの呪詛を吐きながらAKを撃ち、
弾が切れたらその場で棒立ちになって弾倉を交換する。そこには自分の身の危険など無いかのようにしている。

「娘を返せえええええええええええええええ」

こんな言葉が、そろりそろりと近づくクーの耳に入った。
恐らく、ニューソク軍か警察の撃った流れ弾で愛娘が死んだとかそんなところだろう。
普通の人なら顔をしかめ、涙を流して同情するところだが、クーにそんなつもりは欠片も無かった。
もちろん、彼女が人外の情を失った生き物というわけではない。
クーの頭にあるのは、味方のパイロットが銃を持った敵に包囲され、いまにも殺されようとしていること。
そして、この場で武器を持っているものは全て敵だということである。
敵であれば、どんな外見でもどんな事情でも、一切容赦しない。それがチームVIPのやり方だった。
彼女自身、それが自分の身を守ることをよく知っていた。少しでも容赦すれば先ほどのミルナのようになる。

41 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 21:43:21.55 ID:cKUyZplE0
川 ゚ -゚)(悪いな)

短い言葉を頭の中で唱え、それを免罪符にするかのように、クーは女性の頸にギャロットを括った。
身を翻し、背中合わせになるような体勢で、手元でワイヤーを交差させ、背負い投げのように一気に絞める。
咳のような、声にならない声を上げて女性がもがく。クーは微動だにせず、その時が来るのを待った。
やがて女性の息が止り、クーは動かない躯を地面に下ろした。女性は白目をむいて泡を吹いていたが、
クーは目にも留めずに次の目標を見た。
3人目はしゃがんで一発ずつ撃っている。右で寝ている女性よりは銃に慣れているようだった。


42 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 21:48:09.15 ID:cKUyZplE0

川 ゚ -゚)「・・・」

ギャロットを握り締めて近寄ろうとしたその時、一番奥の男がクーを見た。
恐らく、2人からの銃声が途切れたので不審に思ったのだろう。
驚いた様子で、目を見張っている。クーはギャロットを捨ててアサルトを取り出そうかと思ったが、
その必要は無かった。男の頭に血花が咲き、簡単に倒れた。
あえて振り返らなかったが、ブーンの援護射撃に違いなかった。
銃声は聞こえなかった。基地に一時帰投した時に、サイレンサーを着けていた。
夜の戦いにおいては大きなアドヴァンテイジになる。銃声は、オモチャの電動ガンくらいだし、
マズルフラッシュも見えない。敵からすればどこからの銃撃かも分からないのだ。

44 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 21:50:45.75 ID:cKUyZplE0

これで、ますます時間を掛けていられなくなった。さすがに3人の銃声が途切れれば異常に気付かれるだろう。
クーは足を速め、中腰で走る。無音で。あと数mのところで、立ち上がった敵がこちらを向いた。
中年の、いかにも経験豊富そうな男である。クーはギャロットを片手に、一気に距離を詰める。
ブーンからの援護射撃に期待するには、目標との距離が近すぎた。恐らく射線に重なっている。

こちらに銃を向けようとする男の顔目掛けて、ギャロットを鞭のように放つ。
鋭くしなったワイヤーが目を直撃し、男はとっさに目を押さえて唸る。
クーはギャロットを捨て、左肩のシースに収まったナイフを抜く。少し小さめの包丁くらいの、
黒光りするコンバットナイフだった。
体の中央で構え、男に体当たりしながら突き刺す。左胸の、肋骨と肋骨の間の隙間に刃先を潜り込ませて深く刺す。
そのままレバーを引くように柄を左に押して、強引に抉る。

46 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 21:53:41.82 ID:cKUyZplE0
「アガバアアbヴァsヴァヴァア」

凄まじい痛みで男が暴れ、悲鳴を上げる。即死させられなかったことが悔やまれた。
多分、最後の男に気付かれた。もがく男の肩越しに見ると、こちらにサブマシンガンの銃口を向けるところだった。

川 ゚ -゚)(くそっ!)

悪態を心の中でつきながら、左手で男の襟を掴み、押し倒す。
拳銃弾が頭上を通り過ぎる。

(;◎ω^)「クー!」

ブーンはダットサイトと呼ばれる照準器の狙点を男の胴体に合わせた。
フルオートで、3発だけに調整して撃った。拳銃弾とライフル弾が空中で交差し、ライフル弾だけが男に命中した。

「うわあっ」

まるで仲間に知らせることを目的としているような大声を立てて男は倒れた。
ブーンは続けて1発を撃って追撃した。今度は完全に沈黙した。


47 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/30(水) 21:55:31.72 ID:cKUyZplE0
クーは起き上がって周囲を見渡した。屋敷の北側に立っているものはいなくなった。
一緒に倒れた男は、まだ息があるようだったが、これには喉にもう一度ナイフを突き立てて対処した。
さっきブーンが倒した男の悲鳴で、南側の敵にも気づかれたかも知れない。
屋敷の中に入ればともかく、ここで大集団を相手にするのは避けたかった。

川 ゚ -゚)「ブーン!今すぐ来い!」

ブーンに向けて手招きをして、自分も屋敷に走る。
鉄製の柵を軽々と乗り越え、ところどころ枯れている芝生を踏んで、屋敷の北西角にたどりつく。
遅れて、ブーンが走ってくる。たくさん弾薬を持っているはずなのに、クーより速い。
ブーンが他の隊員より優れている点の一つに、その脚力があった。
持久力も、瞬発力も飛びぬけていた。その点でよい兵隊とも言えた。

川 ゚ -゚)「上の窓から行け!」

クーは頭上の窓を指差し、腰の前で手を組んだ。
走ってきたブーンは、片足をクーの両手の上に乗せて踏み出す。
クーは力を込めて両手を跳ね上げ、カタパルトのようにブーンを押し上げる。
跳びあがったブーンは窓枠に手をかけ、一気に上ろうとした。

2 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/09/13(水) 21:36:59.31 ID:Ij1Eb91l0
ギコが出て行った後、しぃは1人で縮こまっていた。
時おり、窓から弾丸が飛び込んできて部屋中を跳ねる。1発が彼女の隠れるタンスを削って、顔に小さな切り傷を作ったが
それ以外はさしたる怪我も無かった。手榴弾の爆音が建物を揺らしたときは、さすがに驚いた。
ギコに呼びかけたが、返事は無かった。もしやさっきの爆発で・・・とも思ったが、
階下からMP5の銃声が聞こえ、敵が上ってくる気配が無いところを見ると、どうやらギコは1階で粘っているらしい。
正直一人では居たくなかったが、この足では足手まといになる。臨機応変に居所を変えることも出来ないし、
逃げることも出来ない。右足1本しか使えない彼女には、超音速あるいは亜音速の弾丸は簡単に追いつける。
したがって、彼女に出来ることは手元のサブマシンガンを持って震えていることだけだった。
右手でグリップを、左手でフォアグリップを握るMP-7は、近距離で頼もしいほどの火力を提供するが、
それでも彼女は不安だった。たとえ大口径機銃があっても不安に思うだろう。

4 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/09/13(水) 21:40:13.46 ID:Ij1Eb91l0

不意に、北側からの銃撃がぱたりと止んだ。徐々に減っていき、最終的に何も飛んでこなくなった。
自らの命を脅かすものが止んだのは喜ばしかったが、同時に不思議にも思った。

(*゚ー゚)(あれ・・・?)

何かが起こるんじゃないかと感じたしぃは、MP-7の安全装置を見た。
「安全」になっている。これでは弾が出ない。慌てて「全自動」に切り替える。
震える手でMP-7を保持し、少しだけ顔を出して窓を見る。
いきなり真っ黒な人影が下から現れた。

(*゚ー゚)「キャアァッ!!」

パパパパパパパ

驚いたしぃは、引き金を一気に引いてフルオートで人影めがけて撃った。
当たったかどうかは不明だったが、人影はまっさかさまに落ちていった。

5 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/09/13(水) 21:42:57.99 ID:Ij1Eb91l0

(;◎ω^)「うおおおおおおおお!!!!」

窓枠に手をかけ、足を入れて乗り込もうとしていたブーンは突然の銃撃に驚き、転落した。
背中から落ちたが、クーが機転を利かせて受け止めた。

川 ゚ -゚)「何だ!?」

( ◎ω^)「お姫様抱っこktkr」

川 ゚ -゚)「関節技かけるぞ」

(;◎ω^)「すまんお・・・あっ!」

クーに抱きかかえられたまま、ブーンはM4を足の方向に撃った。
何事かと思い東を見れば、飛び出してきた一人の男が倒れるところだった。手にはショットガンがあった。
クーはブーンを転がした。


6 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/09/13(水) 21:45:27.49 ID:Ij1Eb91l0

( ◎ω^)「痛いお・・・」

川 ゚ -゚)「さっきの銃声・・・MP-7だな」

( ◎ω^)「・・・ならギコ達に違いないお」

MP-7は最近支給が始まったばかりの新型個人防御火器だった。
恐らくテロリストに行き渡ってはいない。それに、ブラックホークの携行品リストにもあった気がする。
ブーンは上を向いて窓に呼びかけた。

( ◎ω^)「ギコかお!?助けに来たお!」

川 ゚ -゚)「バカ、声が大きい!」

ブーンはやや大きすぎる声で窓に呼びかけた。
少し遅れてしぃが恐る恐る顔を出した。初めは驚いた表情を、そして嬉しそうな顔を見せた。
今すぐ上の窓に飛び込もうと思ったが、クーは屋敷の西側を見た。
広い芝生の上を3人が近づいてきていた。腰の手榴弾を使おうと思ったが、各人の距離が離れていてもったいない。
そこでM4を取り出し、フルオートで掃射した。1つ弾倉を使い切る前に全て倒した。
切迫していたから仕方なかった。狙いをつけている暇は無かった。


9 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/09/13(水) 21:49:42.14 ID:Ij1Eb91l0

川 ゚ -゚)「早く行け!」

さっきと同じようにブーンを跳ね上げる。今度は難なく窓に入っていく。
顔を出した者を的確に撃つ。ブーンが目いっぱい手と身体を伸ばしてクーを引き上げる。
クーは壁を蹴って頭から2階北西の部屋に飛び込む。

川 ゚ -゚)「ふぅ・・・」

( ◎ω^)「外に敵の増援無しだお」

ブーンは窓から外の様子を窺う。今のところ動くものはいない。

川 ゚ -゚)「しぃ、ギコはどこに?」

(*゚ー゚)「多分1階に降りてます。さっき銃声が――」


ダダダダダダダダ


川 ゚ -゚)( ◎ω^)「!!!!!」

( ◎ω^)「行って来るお!」

1階から銃声が聞こえた。
ブーンはドアを開け、階段に向かった。


11 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/09/13(水) 21:54:01.16 ID:Ij1Eb91l0
( ;,゚Д゚)「くそっ」

南の窓からのぞいた影に、ギコは残り少ない残弾を放った。
屋敷内からの反撃が少ないことに気付いた敵は、大胆に窓際に近づいては銃口だけを突っ込んで撃ちまくる、という事を
繰り返していた。その度にギコは身をすくめ、時おり現れる敵影に、自分の存在を誇示するために1発ずつ撃っていた。
ただ、それを続けていてもやがて弾が切れるだけだった。
そうなれば、ただ嬲り殺されるだけになる。先ほどからリトルバードの羽音は聞こえるが援軍は一向に来ない。
ギコは自分の中の不安がどんどん増大していくのが分かった。
1階には西向きの窓は無い。それが幸いだったが、南北と東にはいくつかの窓がある。
敵がその気になればひとたまりも無かった。

( ,,゚Д゚)(どうか・・・一斉に来ませんように・・・)

ガシャアアアアン
           グアシャッガシャ

                       バガッグシャ

( ,,゚Д゚)(きやがった━━━━━(,゚Д゚)━━━━━━ !!)


12 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/09/13(水) 21:56:39.61 ID:Ij1Eb91l0
ガラスの砕かれる音が響く。
よりにもよって3方向からの同時攻撃だった。
心臓が縮む思いをしながら瞬時に反撃の手段を考えた。そんな訓練は受けていないが、極限状況の頭が考えた。
まず南の窓からの敵を排除する。手すりを飛び出て腰を屈めながら南に行く。
敵がでたらめな射撃をしてくるが、当たらないでくれと念じながら戸棚の陰に行く。
そこでMP5を構え、丁度窓枠を乗り越えようとした老人の胸に銃弾を送り込む。

「あぎゃっ」

あっけない声を立てて老人は転落する。戦闘不能にしたかは窺い知れなかったが、それでも確かめている暇は無い。
次は東だ。

15 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/09/13(水) 21:59:30.64 ID:Ij1Eb91l0

素早く足を動かして東の窓に向かう。チームVIPのやつらみたいだな、とギコは笑った。
東の窓には人の姿はなく、もう入り込んでいるようだった。
そこでしゃがんで敵を待つ。敵も用心しているようで足音を出来るだけ殺し、近づいてくるのがわかった。
どうしたものか。こちらの火力も少ないし相手も警戒している。

( ,,゚Д゚)(正面からやりあったら負ける・・・)


左を見ると、花瓶がサイドテーブルの上にあった。花と一緒にさぞや美しい彩をもたらしていたであろうその花瓶に
花は挿されていなかった。

( ,,゚Д゚)(こいつだ!)

とっさに左手で花瓶をつかみ、右手のほう、南東角に向けて花瓶を投げた。
花瓶は壁に当たって派手に割れた。
室内は真っ暗だったから、まだ目が慣れてない侵入者は、花瓶の方向にAKを掃射した。
マズルフラッシュで照らし出されるギコには気付かない。そのまま弾倉を空にする。
すぐにギコは飛び出して、胸に3発を撃ち込んだ。
侵入者は崩れ落ちたが、近くで顔を見てギコは驚いた。まだ若い女性だった。
目を見開いて驚いていると、すぐ目の前から銃撃を受けた。侵入者は1人ではなかった。
銃弾がギコの左肩をえぐり、左耳の直ぐ横を通り過ぎる。

( ;,゚Д゚)「うわあっ!」

たまらず右に倒れこむが、それでも1発を撃ち返した。弾丸は同じく左肩に当たり、
侵入者は傷をおさえてうめく。ギコは床に倒れ込みながら、親指でセレクターを操作し、
至近距離からフルオートで残弾を全てぶち込んだ。


16 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/09/13(水) 22:03:07.91 ID:Ij1Eb91l0

「きゃふっ」

甲高い声を上げて回るように倒れる。東側からの2人とも女のようだった。
左肩を見ると、一文字に抉られた跡から血が流れていた。怪我を認識したその瞬間に激痛が走る。

( ,,゚Д゚)「いってえ・・・!!」

歯を食いしばって耐え、痛みで動かせないのをこらえて、左手で最後の弾倉を取り出す。
MP5に装填しようとしたとき、背後から足音が聞こえた。
振り返ったギコの目に、外から差し込む光を反射した白刃が見えた。

( ,,゚Д゚)「!!!!!!!!!!」

17 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/09/13(水) 22:08:21.53 ID:Ij1Eb91l0

とっさにMP5で受け止める。下手をすれば指か手首を飛ばされるが、避けることは出来ない距離だった。
ギコに斬りかかったのは日本刀を持った老人だった。刀身と同じ白髪が目立った。
老人は刀身を放さず、時代劇のように一気に押してきた。
MP5を両断するほどの切れ味が無かったのと、老人の力が弱いことが救いだった。

「婆さんの仇じゃあ!!!!!」

( ;,゚Д゚)「ぐぐぐ・・・!!」

しばし、膠着状態で押し合う。だが徐々にギコが劣勢になってきた。
負傷した左手の力が抜けてゆく。刀身がギコの目の前に迫る。


18 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/09/13(水) 22:10:47.50 ID:Ij1Eb91l0

( ;,゚Д゚)(まずい、負ける・・・!!)

歯の抜け落ちた老人の口内が見えるほど両者は接近していた。
そしてギコの頚動脈へと刃が迫っていく。

「死ねええええええええええええええ    うぇっ!!!!」

突然、老人が硬直し胸に穴が空く。それは一瞬で倍増し3倍増し、老人の目が上を向いて、そして倒れた。

( ,,゚Д゚)「?」

ギコが顔を上げると、そこにはずっと待ちわびた姿があった。

( ◎ω^)「待たせたお、ギコ」



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