( ^ω^)ブーンが特殊部隊になったようです
17 642 ◆y2aT3ezeJ6 2006/08/21(月) 20:17:41.87 ID:YHq9ybje0
chapter9.迷走

ジョルジュ達は、徒歩で西に向かっていた。
さっき通った道は避け、慎重かつ迅速に、静まり返った街路を進む。
後ろから2番目にいるドクオが、先頭のビコーズに尋ねる。

('A`)「なんでさっき来た道を戻るんだ?」

( ∵)「ギコは北で撃墜されたからな。そっちにヘリを落とせるほどの重武装があるって事だろう」

('A`)「なるほど」

(  ゚∀゚)「こっちも人は集まってきそうだけど、北よりはマシだろうよドクオ」
(  ゚∀゚)「おっと、そろそろ大通りだ。気をつけろ」

ジョルジュ達は、南東と南西のブロックを分ける南の大通りにさしかかった。
ミルナとビコーズが、慎重にあたりの様子を窺う。今のところ人影は無かった。
先ほど殲滅した集団の残党がいないか心配であったが、どうやら兵力を全て小学校に回したらしく、誰もいなかった。


19 642 ◆y2aT3ezeJ6 2006/08/21(月) 20:20:07.55 ID:YHq9ybje0

( ∵)「ジョルジュ、大通りに人影無しだ」

(  ゚∀゚)「了解。しかし普通は見張りくらい居てもいいよなあ」

( ゚д゚ )「我々が逃げ出したらどうするつもりだったんでしょうか」

(´・ω・`)「やっぱり素人だったんだね」

まずはミルナとビコーズの2人が反対側に走った。後ろからジョルジュとショボンが援護する。
ショボンは建物の屋上を、ジョルジュは大通りに向け銃を構える。
後ろでは、ハインリッヒとドクオが後方からの襲撃に備えていた。


21 642 ◆y2aT3ezeJ6 2006/08/21(月) 20:24:31.44 ID:YHq9ybje0

無事に渡りきった2人は、今度はショボンとジョルジュを援護する。
2人が走り始めた時、車のエンジン音と複数の人の声が聞こえて来た。

(;゚∀゚)「敵か!?ドクオ、ハインリッヒ!今すぐ来い!」

ジョルジュは反対側にたどり着き、すぐに回れ右してドクオ達を待った。
どうやら北東かららしい車と人の音はどんどん近づいてきた。
ハインリッヒと、その後ろにドクオが急いで走ってくる。
いまやハッキリとエンジン音が聞こえてくるまでになっていた。
ドクオが大通りの真ん中を過ぎた頃、北の路地から一台のピックアップトラックが姿を現した。
その荷台には、重機関銃が据えられていた。

22 642 ◆y2aT3ezeJ6 2006/08/21(月) 20:26:03.33 ID:YHq9ybje0

(´・ω・`)「!!!テクニカル!」

通称テクニカルと呼ばれ、四輪駆動車の上に重機を据えつけただけの簡易兵器はすぐには撃ってこず、
代わりにRPGを持った男が四駆の後ろから躍り出て、派手な爆炎を噴出しながらロケットを発射した。
RPG7の弾頭はドクオの目の前、ハインリッヒの後ろを通り抜け、ドラッグストアのショウウインドウに飛び込んで爆発した。
驚いたドクオが前につんのめり、こらえきれずに転倒する。
四駆の上の重機がドクオに狙いをつける。

(;゚∀゚)「ドクオ!?くそ!!」

ジョルジュがMk48をフルオートで連射して、四駆を狙う。
彼我の距離は100mほどであったが、なかなか命中せずに四駆の車体に当たり、弾痕を穿つ。
その隙にハインリッヒがドクオを助け起こし、腰だめで散発的に発砲しながら走る。
遂に重機が火を噴き、50口径弾をばら撒き始めた。ドクオ達の直ぐ近くに着弾する。


26 642 ◆y2aT3ezeJ6 2006/08/21(月) 21:08:03.60 ID:YHq9ybje0

(;゚∀゚)「やばい!!」

ズダァン

(´・ω・`)「早く!」

重機関銃を撃っていた男を一撃で葬ったショボンが手招きする。
ドクオとハインリッヒは何とか西の路地までたどり着いた。
テクニカルが無力化された後も敵が出てくるが、ジョルジュが全て穴だらけにして牽制した。

('A`)「すまねえ!」

(  ゚∀゚)「礼はあとにしとけ!」

煙幕手榴弾を投げたジョルジュは、後方の警戒を再びドクオ達に任せて走り出す。
たちこめる煙を恐れた敵はしばらく足止めされることになった。
何人かの勇敢な敵が、AKを撃ちながら突っ込んできたが、ハインリッヒのマシンガンに面白いように倒されていった。
それからは突っ込んでくるものはおらず、闇雲に、見当外れのところに弾が飛んでくるだけだった。

从゚∀从「離脱しますよー!」

('A`)「OK!!」

ドクオ達も適当に切り上げて走り出した。


32 642 ◆y2aT3ezeJ6 2006/08/21(月) 21:33:40.95 ID:YHq9ybje0

( ∵)「ミルナ、敵は見えるか?」

( ゚д゚ )「・・・今のところ見えません」

南大通りから更に入り込み、製薬会社ビルのすぐ近くまでジョルジュ達は戻ってきていた。
ミルナがこっそりと様子を窺うが、野次馬に集まった民間人がいるだけで、特に武装したテロリストは見つからなかった。
製薬会社ビルは未だに燃え続け黒煙を噴き上げていた。
ランリッツベルグにあった消防署は、とっくの昔にテロ攻撃され壊滅していた。
さすがにこれは民間人の支持を失い、そのテロを実行したグループは別のグループに潰された。
そんな経緯もあって、製薬会社ビルに消防車が来ることも無く、近くの消火栓からホースを引っ張って消火に当たっている、
という始末だった。
幸い、燃えるビルが人目を集めている。ジョルジュ達はその隙に迂回して北上することにした。
後ろのジョルジュにハンドシグナルで合図をしてから、進行方向を警戒しながら進む。
製薬会社ビルの南を通り抜け、西に100m進んだところで十字路にさしかかった。
北に向かって真っ直ぐに伸びているようだった。ここを曲がって墜落地点に向かう。

33 642 ◆y2aT3ezeJ6 2006/08/21(月) 21:37:11.20 ID:YHq9ybje0

ミルナが先頭に立って進んでいると、カートを押した老婆が出てきた。
完全武装した兵士を見て驚いたようで、声も出さずに目を丸くしていた。

( ゚д゚ )「動くな!手を上げるんだ」

ミルナが遠くに聞こえないように、それでいて老婆に聞こえるように警告する。

「ひ・・・!ど、どうかお助けを・・・・!!!!お金ならここに・・・」

老婆は腰を抜かしてへたり込み、カートの中から財布を取り出そうとする。

( ゚д゚ )「手を上げるんだ!・・・・ッ!」

しかし、老婆が取り出したのは財布ではなく、45口径の拳銃だった。

「死ねえ!!!!!」

不意を突かれたミルナは銃弾をまともに浴びる。
胸に2発喰らい、ドサリとその場に倒れた。

36 642 ◆y2aT3ezeJ6 2006/08/21(月) 21:41:22.14 ID:YHq9ybje0
( ∵)「この糞ばばあ!!!!!!」

すかさずビコーズがM4で老婆を射殺する。今度は紙人形のように老婆が倒れる。

( ∵)「こちらビコーズ!ジョルジュ、ミルナが撃たれた!」

ビコーズはミルナに駆け寄り、傷の具合を確かめる。
見れば、胴体に喰らった拳銃弾は、防弾ベストで止められていた。
ミルナは着弾の衝撃と撃たれたショックで動けなくなっていただけだった。

( ∵)「大丈夫かミルナ!」

( ゚д゚ )「・・・!?ああ、大丈夫です中尉」

( ∵)「油断するな。命令を無視したら相手が誰だろうと撃て!」

( ゚д゚ )「・・・了解しました」

ビコーズは、今度はミルナの無事を伝える。
一旦位置を代わり、ビコーズが隊の先頭に立つ。
そのままジョルジュ達は北に向かっていく。と、その時再び不吉なエンジン音が聞こえ、
西からテクニカルが飛び出してきた。今度は初めから重機関銃を撃ちながらだった。
重低音が壁に反響して、遠くからでも聞ける。

38 642 ◆y2aT3ezeJ6 2006/08/21(月) 21:47:56.86 ID:YHq9ybje0

(´・ω・`)「テクニカル!」

ショボンはM14で機関銃手を狙う。
だが、銃口がこちらに向いてくるのを見たショボンは左の路地に飛び込んだ。
間一髪で、飛び込んだ路地の角を銃弾がえぐる。
飛び込んだ先は汚いヌルヌルしたコンクリートだったが、ショボンは気にせずに匍匐して退避する。
先ほどまでショボンがいた位置を重機関銃の弾丸が破壊した。

(  ゚∀゚)つミ「喰らえ!」

ジョルジュが普通の手榴弾を取り出して投げる。
手榴弾は正確に、ピックアップトラックの荷台に転がり、破片と爆風を撒き散らした。

('A`)「ショボン、大丈夫か!?」

今度はドクオがショボンを助け起こす。

(´・ω・`)「ああ、大丈夫。早く行こう」

先ほどの爆発は、燃える製薬会社ビルに向いていた耳目を一気に引きつけたようで、
人々が口々に「あそこだ!」「いたぞ!」などと叫んでいるのが聞こえた。
正直、個人個人の武装と練度は大したことはない。
だが数が違いすぎる。開けた場所ならともかく、この入り組んだ市街地では包囲される恐れがあった。
そうなれば、少人数ゆえの素早さを生かして一気に逃げ切るしかなかった。

40 642 ◆y2aT3ezeJ6 2006/08/21(月) 21:50:23.95 ID:YHq9ybje0

(  ゚∀゚)「走れ!走れ!」

ジョルジュが時々後ろを振り返りながら、敵が来ないか確かめ、顔を出した民間人には1発威嚇射撃して追い払う。
今はまだ少ないが、そのうちにさっきの武装した敵が増援に来るかもしれない。

最後尾、ドクオとハインリッヒは何を思ったか立ち止まり、路上駐車のセダンの陰や壁のくぼみに身を隠し、
敵が押し寄せてくるであろう方向に向き直った。


41 642 ◆y2aT3ezeJ6 2006/08/21(月) 21:53:18.96 ID:YHq9ybje0

(;゚∀゚)「何やってる!?早く来い!」

('A`)「俺たちはここで食い止める!」

( ∵)「たった2人で無茶だ!」

从゚∀从「キリのいいところで切り上げるから大丈夫ですよー!?」

(´・ω・`)「そんな・・・」

('A`)「来たぞ!」

覆面を被った男達が、申し合わせたかのように出てきた。
さっき南大通りで会った奴らだ、とドクオは思った。
左の奴に1発、右の2人に3発ずつ浴びせる。遮蔽物からの狙い撃ちだった。
まるでモグラ叩きだな、とも思った。

(  ゚∀゚)「・・・分かった!必ず来いよ!」

('A`)「了解!」

2人を足止めに残し、ジョルジュ達は北に向かった。
足音はミニミの連射音がかき消した。




4 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 19:34:25.05 ID:+mK/sF7d0
―――ランリッツベルグ・北西ブロック―――

( ,,゚Д゚)「はあ・・・はあ・・」

(*゚ー゚)「中尉、大丈夫ですか!?」

( ,,゚Д゚)「全然平気だぜゴルァ。心配無用だぜ・・・」

負傷したしぃを連れたギコはかなり疲労していた。自身も負傷していたが、最低限の処置だけで済ませた。
とにかくヘリから離れなければならなかった。
テロリストに捕獲されたヘリのパイロットの末路を考えただけでも身震いがする。
例えば、4日前ビコーズ達が訪れたときに捕まった、装甲車の指揮官は生きながら首を斬られバラバラにされ焼かれた。
その様子はネットにアップされ、話題になっていた。
自分もそうだが、なによりもまだ若い部下がそうなる事だけは避けたかった。
ドアガンナー達には悪かったが、まずは生きている方を優先する。ここは戦場であるから、それも仕方の無いことであった。


5 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 19:36:41.53 ID:+mK/sF7d0

( ,,゚Д゚)「それにしても、ここはどこなんだ?」

墜落したときは無我夢中で、どこに落ちたのかは分からなかったし、機外に脱出してからは人のいない狭い道を闇雲に
動き回っていたせいで、ギコ達は自分の位置を見失っていた。
時々南のほうから銃声が聞こえた。ひょっとしてチームVIPの連中かもと思ったが、どの道合流する前に敵に捕まっては話にならない。

(*゚ー゚)「・・・!!中尉、誰か来ます」

人の気配が近づいてくる。

( ,,゚Д゚)「休みなしかよ畜生」

再びギコとしぃは歩き出す。本人達は気付いていないが、北東ブロックの方に進んでいた。

慎重に顔を出し、決して見つからないように進む。
3つ目の角を曲がったその時、不意に布で顔を覆った男と鉢合わせた。
手には狩猟用のライフルが握られていた。

7 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 19:41:01.48 ID:+mK/sF7d0

( ;,゚Д゚)「うおっ!!」

とっさに手に握ったMP5を顔面に撃った。2mあるかないかの近距離であったから、外しようがなかった。
向こうも銃を向けようとしたが、得物が小さい分ギコの方が早かった。

パパパパパパパパ

軽快な拳銃弾の音が辺りに響く。目の前の男は倒れたが、じつに不味いことになった。
ジョルジュ達と違い、ギコとしぃは碌な武装を持ってない。

「こっちだ!」
      「逃がすな!!!」
               「東に回れ!!」

方々から声が聞こえる。自分達を探しているのは明らかだった。
ギコとしぃはなんとか東に逃げる。路地を右に曲がり左に曲がり・・・ついに行き止まりになった。


8 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 19:42:54.84 ID:+mK/sF7d0

(*゚ー゚)「中尉!!」

敵の声はどんどん近づいてくる。引き返して別の道を探す時間はなさそうだった。

( ,,゚Д゚)「一か八かだ!!」

袋小路の右側にあったドアを開ける。鍵がかかっていると思われたが、意外にもドアはあっさり開いた。
押し込み強盗のようにMP5を突きつけながら急いで中に入る。ドアを閉め鍵をかけて息を殺す。
外に、ギコ達を探しているであろう敵がやってきたのがわかる。
どうか入ってこないでくれ、と念じながら呼吸すらも止める。心臓の音がはっきりと聞こえた。

10 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 19:44:39.58 ID:+mK/sF7d0

敵は結局、ドアをチェックすることも無く去っていった。
まずは虎口を脱した、と言いたかったが、どの道身動きはとれなかった。
逃げたパイロット2人はこの辺りにいるだろうと見当はつけられているだろうし、
いつこの建物に捜索の手が及ばないとも分からなかった。
この建物で救出を待つしかない。その場合、どうやって自分達の位置を知らせたらいいものか。
ギコはそんなことを思案しながら、部屋の中を見渡す。すると、角に階段を見つけた。

( ,,゚Д゚)(ひょっとして上の階に人が?)

少しまずいな、と思った。もし家人がいたとしたら、今でこそ見つかってはいないが、見つかりでもしたら外にいる敵に
通報されてしまう恐れがあった。

( ,,゚Д゚)「しぃ・・・ここに隠れてろ」

銃を構えながら、人が十分入れる大きさの収納スペースを開け、そこにしぃを隠す。
そして自分はMP5を片手に、音を立てないように慎重に階段を上ってゆく。
もし家人がいて、通報されるようなら躊躇わずに撃つ気だった。

12 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 19:47:29.03 ID:+mK/sF7d0

階段を上がると、ドアが3つ並んでいて、廊下の突き当りにはもう1つ階段があった。
どうやらこの家は3階建てらしい。まずは1つ目のドアを開ける。中に人はいない。

( ,,゚Д゚)「・・・」

次に2つ目のドアを開ける。そこにも人の気配は無かった。
3つ目のドアがあった。ここには人がいた。
ベッドがあって、かけられた布団が人の形に盛り上がっている。後頭部も覗いていた。
ゆっくり、足音を立てないように1歩1歩近づいていく。
気配に気付いたベッドの主がこちらを振り向いた瞬間、ギコは左手で口を塞ぎ、右手のサブマシンガンを突きつけた。

「んううう〜〜〜!!!!」

いきなり口を塞がれたベッドの主は抵抗を試みて暴れる。

( ;,゚Д゚)「暴れるな!俺は強盗じゃない!大人しくしていれば何もしない!」

自分に銃が突きつけられていると分かるとおとなしくなった。
見れば、まだ年端も行かない少女だった。

13 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 19:50:10.67 ID:+mK/sF7d0
( ,,゚Д゚)「手を放すぞ。声を上げるなよ」

*(‘‘)*「・・・・・・」

少女は黙ってうなづいた。恐怖で震えている。
ギコは左手を少女の口から放した。それでも一応銃は向けたままにした。

( ,,゚Д゚)「質問に答えてくれ。この家に他に人はいるのか?」

カーテンの隙間から外を窺いながら少女に尋ねた。少女は答えず、代わりにギコのMP5を指差した。

*(‘‘)*「お願いですから・・・それ・・・しまって下さい・・・」

( ,,゚Д゚)「?」

*(‘‘)*「私・・・鉄砲とかそういうのダメで・・・」

( ,,゚Д゚)「あ、ああ!分かった。ただし大きな声をたてるなよ」

ギコは銃口を下ろした。目の前の少女はか弱そうで、反撃の手段は持ち合わせてないだろうと思われた。


16 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 19:53:48.07 ID:+mK/sF7d0

( ,,゚Д゚)「で、この家に人は?」

*(‘‘)*「・・・私だけです。風邪で寝てたんです」

( ,,゚Д゚)(・・・鍵ぐらいかけとけよ。あ、でもそのおかげで助かったんだったな)

( ,,゚Д゚)「そうか。じゃあ次の質問だ。ここはどこだ?」

*(‘‘)*「知らないんですか?」

( ,,゚Д゚)「俺だって好きで侵入したわけじゃないぜ。仕方なく、だ」

*(‘‘)*「それなら、そこの机の一番上の引き出しの中の紙を取ってくれますか?」

( ,,゚Д゚)「これか?」

ギコは部屋の隅にある机の引き出しをさぐり、それらしい紙を取り出す。
机は大きな学習机で、大事に使っているらしく、綺麗なものだった。
ギコは少女のもとに行き、先ほどの紙を広げる。それはランリッツベルグの地図だった。
ブラックホークの中にも同じものがあったが、混乱の中で持ち出すのを忘れていた。

17 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 19:57:56.41 ID:+mK/sF7d0

*(‘‘)*「えっと・・・この家の位置はここです」

少女が指した点は、北大通りに程近い、中心部より大分北の場所だった。
ギコは、ここで初めて自分が北西ブロックに落ちたことを知った。

( ,,゚Д゚)「そうか・・・」

またカーテンの隙間から外を窺う。敵も諦めてないようで、外からは声が聞こえる。
動けないのはもちろんのこと、一番の問題は救出部隊に自分の位置を伝えることができない、ということだった。

( ,,゚Д゚)「この家に救急箱はあるか?」

*(‘‘)*「あ、一応1階の戸棚にあります・・・」

( ,,゚Д゚)「そうか。実は怪我人がいるんだ。連れてくるからちょっと待ってろ」

そう言い残して、ギコは1階に降りた。本来なら敵地の住民など信頼すべきではなかった。
しかし、ギコは少女が通報するとは考えなかった。なんとなくそんな気がしたのもあるし、
誰かを信頼したかったからでもあった。

1階に行き、戸棚を開けて救急箱を手に取る。次に隠れているしぃを助けながら2階に戻る。
少女の部屋に戻り、しぃを座らせて、応急手当をよりしっかりしたものにする。
そして自分の左腕の傷も消毒し、包帯を巻く。

20 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 20:02:55.97 ID:+mK/sF7d0

*(‘‘)*「あの・・・もしかして政府軍の人なの?」

少女はずっと気になっていたことを質問した。
ギコとしぃはフライトスーツを着ていたし、ギコはヘルメットまで被っていた。上腕部には部隊章が付いている。

( ,,゚Д゚)「・・・そうだ」

*(‘‘)*「さっきとても大きい音がしたけどもしかして・・・」

( ,,゚Д゚)「そうだ。俺たちはヘリのパイロットだ。落ちてここまで逃げてきたんだ」

*(‘‘)*「それなら早く逃げた方がいいわ・・・。ここの人たちは政府軍をすごく憎んでる」

*(‘‘)*「親や兄弟、恋人を亡くした人たちがとても多いわ」

( ,,゚Д゚)「お前さんは通報しないのか?窓を開けてキャーと叫べばすぐに助けがくるぞ」

何を言ってるんだ俺は。ギコは自分の発言を不思議に思った。


21 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 20:06:47.12 ID:+mK/sF7d0

*(‘‘)*「私は・・・争いが嫌いなの。政府軍も、外の人たちも・・・」

( ,,゚Д゚)「そうか・・・」

(*゚ー゚)「とにかく、ありがとうね。助かったわ。中尉、迷惑にならないうちにどうにかして出て行きましょう」

( ,,゚Д゚)「それもそうだな。なあ、この家から人目に付かずに逃げるには―――」

その時、1階のドアが激しく叩かれる音がした。
ノックなどと生易しいものでなく、拳でドアを割るのかという勢いだった。
開けろ、開けろと大声で騒いでいる。

(*゚ー゚)「誰か来た!?」

*(‘‘)*「そこの納戸に隠れて!!」

少女は部屋の納戸を指示する。そこにはあまり物が入っておらず、人2人が何とか入れる空間はあった。
しぃが先に、ギコが後に入る。もちろんMP5を携えて。
ギコ達の痕跡を消すと、少女は1階に降りようとした。だが、部屋の扉を開ける前に、1階のドアが開く音がした。
恐らく鍵が壊れたのだろう。しぃが身を硬直させる。
そのままドタドタと乱暴な足音が響く。

25 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 20:15:33.48 ID:+mK/sF7d0
侵入者は2階に上ってきたらしい。と言ってもギコ達も侵入者であるから、この表現は適切でないかもしれない。
ドアを乱暴に開け閉めする音がして、遂に少女のいる部屋に入ってきた。
ギコとしぃは息を殺す。見つかればそれまでだった。

「おい、ニューソクの糞どもが来なかったか?」

声から察するに、侵入者は1人のようだった。
浅黒い肌、汚く染めた金髪に、鼻や口にピアスをしている。外見で言えばかなり威圧的だ。
手にはピストルがあった。

*(‘‘)*「知りません。なんですか勝手に人の家に」

少女は恐れずに毅然とした態度で否定する。
金髪の男がチッと舌打ちをする。

「ああ?何だその言い方はよ!?こっちゃ何人もやられてるんだぜ?」

*(‘‘)*「病気で調子が悪いんです。さあ出て行ってください」

少女は手の甲を上に向け、そろえた指をクイクイッと動かした。
「出て行け」のジェスチャーだった。少女はまだこういう輩のいなし方を知らない。
それがまずかった。不快感をむき出しにしたその仕草が金髪男の逆鱗に触れてしまった。


26 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 20:19:13.57 ID:+mK/sF7d0

「・・・このガキ!!!」

金髪男は少女の顔面を思い切り殴りつけた。成人男性の一撃をまともに受けたのだからたまらない。
少女は弾き出されるように、床に崩れ落ちた。

「調子に乗るんじゃねえぞコルァ!!!」

ギコが怒鳴るときの口癖に似た言葉を発して、金髪男は少女の上に馬乗りになり、両手で殴りつける。
似てはいたが、その怒声は猛獣の咆哮のような、人間味を感じない不気味なものだった。
少女は顔をそらし抵抗するが、総合格闘技の一幕のように一方的に殴られる。

28 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 20:22:36.14 ID:+mK/sF7d0
数回殴りつけた男は、落ち着いたのか手を止めた。怒りを湛えた目が、なにか別のどす黒い感情を持った目に変わる。

「・・・おめぇ結構可愛い顔してるじゃねえか・・・へへへ」

*(‘‘)*「え・・・」

もちろんそれは、ラブコメの男の子が言うちょっと恥ずかしい台詞の類ではなく―――

*(‘‘)*「きゃああああああああ!!!!!!」

男として、いや生物の雄としての本能を爆発させた金髪男は少女に覆いかぶさった。

30 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 20:27:38.52 ID:+mK/sF7d0
突如起こった怒声と、何かが倒れこむ音に驚いたギコは、そっと横開きの納戸の扉を開けた。
ばれない様に、少しずつ。左目だけが出るように。暗い納戸の中に光が差し込んで、視界が開けたとき、
ギコは信じられないものを見た。
男が少女の上にまたがっている。少女は泣き喚いて抵抗しているが、たまに思い出したように殴って黙らせる。
パジャマの前ボタンを無理やり引き千切っている。男は実に愉しそうな表情だ。何をやっているかは一目瞭然だった。

( #゚Д゚)「・・・ッ」

しぃは何も見えなかったが、目の前のギコから、何か紐が切れる時のような音を聞いた。


32 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 20:29:22.95 ID:+mK/sF7d0
ガラッ

( #゚Д゚)「ゴルァアアアアアアア!!!!!!!!」

怒鳴り声と一緒に、突如飛び出してきたギコを見て、少女にまたがる男はポカンと口を開けていた。
拳銃を取るのも忘れていた。
ギコは腰だめに構えたMP5の引き金を一気に引き絞った。4発の9mmパラベラム弾が頭部に命中し、血を吹き上げながら男は倒れる。

*(;‘‘)*「ひっ!」

少女は服の前がはだけているにも関わらず、引きつった顔で後ずさる。
だがギコは引き金から指を離さない。

( #゚Д゚)「死ね!このカスがぁ!!!!」

弾倉に残っている残弾を全て、既に死んでいる男の上半身にぶち込んだ。
男の死体はそれはもう酷いことになった。部屋の壁には血飛沫が飛び散っていた。
出てきたしぃが、部屋の中の状況を悟り、少女に駆け寄って抱き寄せる。

36 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 20:35:11.50 ID:+mK/sF7d0

(*゚ー゚)「大丈夫!?」

*(‘‘)*「ぅん・・・」

少女は気丈に振舞った。涙の跡を拭いて服を元に戻す。
この街ではこんな少女でさえ強くなければいけないのか。しぃは心が痛んだ。

新しい弾倉を装填したところで、ギコは我に返った。
先ほどの銃声は外に聞こえたはずだ。それならもうここには居られない。

( ,,゚Д゚)「すまねえが、俺たちは出ていかねえとならねえ。さっき言ってた脱出路を教えてくれ。」

*(‘‘)*「はい・・・3階の外れに、屋根の上に上がる扉があります」
*(‘‘)*「そこを上がったら、家々をつなぐ通路があるんです。もともと火災の時の避難用のものなんですけど」

*(‘‘)*「その通路を使えば空き家に行けます!早く行ってください!」

( ,,゚Д゚)「本当にスマン!恩は忘れね・・・」

( ,,゚Д゚)(ん?)

ギコは頭の中に引っかかるものを感じた。
本当にこのまま立ち去っていいのか。何か忘れてやいないか。


37 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 20:37:11.13 ID:+mK/sF7d0
( ,,゚Д゚)(・・・あ!)

少女のことを忘れていた。もし自分達が逃げ出した後に、さっきの男の仲間がやってきたら。
自分達をかくまった少女に累が及ぶのではないか。かといって一緒に逃げるわけにもいかない。
しぃを助け起こし、部屋を出る前に少女を呼び寄せる。

( ,,゚Д゚)「いいか。銃で脅されて仕方なく隠したと言うんだぞ」

*(‘‘)*「・・・うん」

( ,,゚Д゚)「じゃないとお前さんの身が危ないんだ。で、助けにきたこの男を俺たちが殺した。いいな?」

*(‘‘)*「・・・うん」

( ,,゚Д゚)「よし、いい子だ。あとな・・・」

*(‘‘)*「??」

( ,,゚Д゚)「名前を教えてくれ。俺はギコ・ハニャーン」

(*゚ー゚)「お互いの名前を知らずにお別れなんて寂しいわ。私はしぃっていうの」

*(‘‘)*「私は・・・ヘリカル」

( ,,゚Д゚)「そうかヘリカルっていうのか。また会おうぜ」

*(‘‘)*「うん!」



38 名前:642 ◆y2aT3ezeJ6 :2006/08/25(金) 20:38:43.61 ID:+mK/sF7d0
( ,,゚Д゚)「じゃあ、最後にもう1つだけ我慢してくれ」

*(‘‘)*「ギコさん?」

ギコは突然、ヘリカルを突き飛ばした。優しく、怪我をしないように。ヘリカルは床に尻餅をつく。
ギコはMP5の銃口をヘリカルに向けた。

(*゚ー゚)「何を!?」

*(‘‘)*「えっ」

( ,,゚Д゚)「・・・悪いな」

再び、銃声が響き渡った。



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