ブーンが初恋の夢を見たようです(^ω^ )
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/10(木) 23:17:54.03 ID:E6E9bWNC0
また初恋の人の夢を見た。

夢が覚める前までにあったはずの全てのリアルが

全てひっくるめて夢だったと言うのが酷く笑えた。

――うんざりするほど繰り返されてきた夢。

まだ頭の中に残る感覚。そう、あれは――


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/10(木) 23:18:51.62 ID:E6E9bWNC0
ξ--)ξ「…………」

頭を抑えながら起き上がる。
徐々に意識の解明度があがって行く。
日常にひっぱり戻される感覚。


毎回の事だが好きではない。


ξ゚听)ξ「またあの夢……」

そう言いつつ、言うも言われぬ心地良さを私は覚えている。
もう聞く事の出来ないであろう浅いテナーの声。
もう見る事の出来ないであろうあの締りのない顔。

年々薄くなっていく夢の感覚は、開けていく距離にきっと比例している。

ξ゚听)ξ「……馬鹿馬鹿しい」
窓辺に寄ってブラインドをあげる。
シャッ、と言う鋭い音と一緒に光が部屋に入ってきた。


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/10(木) 23:19:23.78 ID:E6E9bWNC0


ξ゚听)ξ「今日も一日、頑張りますか……!」


ニュー速県から上京してもう3年。
国公立の大学三年生になった。
――アイツのいない三度目の夏が訪れようとしている。


       ツンが初恋の夢を見たようですξ゚听)ξ




31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/10(木) 23:19:43.50 ID:E6E9bWNC0
《第一話 続いていますか? 続いていてもいいですか?》

『……それ、何て曲?』
訝しげな声。
音の悪いスピーカーから出た音みたいに、所々掠れて聞き取れない。

『……へえ」』
感心したような声。


ξ゚听)ξ「……平穏無事な日々」


夢よりもいくらか不明瞭になっている声を思い出しながら、
手にした音楽ノート。空白になっている題名部分を指でなぞりながら、笑ってみる。
鏡がないから解らないけれど、きっと今私は酷い顔をしてるだろう。

『ツンはよく知ってるお、そう言うこと』
自分のことのように嬉しそうな声。


ξ゚听)ξ「当たり前よ。……私が作った曲なんだから」


あの時いえなかった本当の事。
精一杯考えて作った私の曲。イメージはハルシオンデイズ、私達の日常。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/10(木) 23:20:42.17 ID:E6E9bWNC0

ξ--)ξ「けど……まだ未完成なのよね。この曲」

書き上げられない最後の一小節。
ペンを取ればこの曲を仕上げてもいいのだろうかと言う迷いが必ず生じる。
書き上げて、終ってしまわないだろうか
私の。私達のハルシオンデイズが。


ξ゚听)ξ「ばかっ……馬鹿馬鹿しい」


2度目に出た口癖は、いつもよりも長い余韻を私に残す。
蝉の声が聞こえ始めていた。
朝が始まりかけている。新しい朝がきた、希望の朝が。

その点で言えば、私は止まっているのだろう。
――――いや、違うか。

止まれていない。続き続けているだけ。

多分それは――

ξ゚听)ξ「これを終らせるまで、ずっと……」

呟いてから、手の中の音楽ノートを一瞥する。
それでも終らせる気なんて、さらさらなくて。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/10(木) 23:21:08.26 ID:E6E9bWNC0
歯磨きして、顔を洗って。
朝食を取る暇がないと嘆くくせに、長い時間をかけて髪を整える。

ξ゚ー゚)ξ「一人暮らしにも慣れたものね……」

苦笑気味に笑った朝6時30分。


ξ゚听)ξ「…………」


って。


ξ゚听)ξ「今日から大学夏休みだしっ!」


昼まで寝たとして時間損した。
時給710円として2840円分の損失。


ξ#゚听)ξ「あー! 何このケチくさい考え方!」


腹立つ! 調子狂う!
一通り叫んでいたら隣人に壁をドンドン叩かれた。
思わず萎縮する。ご、ごめんなさい。一体誰に謝ってんだか。
そして切り出された最悪な一日のスタート。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/10(木) 23:21:50.66 ID:E6E9bWNC0

……どれもこれもきっとアイツのせいだ。


ξ゚听)ξ「……内藤の馬鹿」


この呟きは届くはずはない。
解ってはいるけれど。

くしゃみの一つくらい、やってくれててもいいとは思う。


妄言を払拭させる為にもとテレビを付けると、
天気予報のコーナーに入った所に丁度被っていた。

新顔の天気予報士が今日から梅雨明け宣言をした後に
連年より少し遅い本格的な夏の始まりが訪れたと言う。


大学の夏休みを利用して、三年ぶりに実家に帰る計画はしているものの、


アイツに。

内藤に会う予定は、立っていない。


67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/11(金) 08:21:59.78 ID:6/xFCd6B0
《第二話 偶然スクランブル》

早起きしすぎた。

時計を見れば6時55分。
とは言え再び寝る気にもなれなかった。

早起きは三文の得と言うけれど、
私の一日のスタートといえば隣人に壁を叩かれ萎縮しただけだったような。
逆に損してる。絶対してる。2840円……ハッ!?


ξ゚听)ξ「貧乏くさい……!」


一人暮らしに慣れすぎたのだろうか。
そう言えば日用品にじわりじわりと100均物が増えていっているような気がする。


ξ゚听)ξ「あー! もう嫌ぁっ!」


ドン。うるさいと壁が叩かれる。
断じて私がうるさいわけではない。薄いのよ、このアパート。
す、すみません。あれ、なんだろうすっごいデジャビュ

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/11(金) 08:22:29.09 ID:6/xFCd6B0
ξ゚听)ξ「……この部屋にいるからダメなんだわ」

結論は極論だった。
そうだ。折角2840円分早起きしたのだ
なにかのお導きだろう。汝外へ出ろ。


ξ゚ー゚)ξ「馬鹿馬鹿しい」


言うものの、私の顔には笑いがこみ上げてきていた。
そう言えば、ブラインドをあげたときに見えた空は言葉を無くす程青かったような気がする。

ξ゚听)ξ「……こう言う日もありよね」

両腕をのばして、体一杯でのびをすると
ポキリ。小気味いい音と共に骨がなった。



69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/11(金) 08:22:57.60 ID:6/xFCd6B0
特に意識せずに道を選択していたせいか、
気付けばいつも利用している最寄駅に到着していた。
いつもと変わらない景色。だけれど学生の姿が見当たらない。

ξ゚听)ξ「まあ、そりゃそうよね」

夏休みだもんね。

考えにいたって特大のため息が出た。
それでも、新鮮な思いがつのるのは、いつもと空気が違うと感じるのは
人口密度がいつもより少ないからだろうか。

それとも

久々にかいだ朝の匂いのせいだろうか。
太陽の粒の匂いは人を詩人にするから。
うん、きっと。そのせいだ。

都会の朝は早いとよく言うけれど、
それは単に町が眠っていないような気がする。
夜の延長線上に朝と昼がある。そんな気がする。

「詩人的だな」
ξ゚听)ξ「そう? いや、多分それは朝のにおいのせいよ。あのにおいの所為でこんな考え方が……」
って。

あれ?


70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/11(金) 08:23:39.71 ID:6/xFCd6B0
ある朝、グレゴール・ザムザが不安な夢からふと覚めてみると、
ベッドの中で自分の姿が一匹の、
とてつもなく大きな毒虫に変わってしまっているのに気がついた。

「大丈夫だよグレゴール・ザムザそれは悪い蟲じゃない」

…………っていやいや、何これ。別の物語よ。
勢いあまって別の物語に突入って何それ。

川 ゚-゚)「久しぶりだな。ツン」

いやいやいやいや、なんでクーがここにいるの?
ちょってまって。ありえない。
と言うか何クーも平然と挨拶してるの。

川 ゚-゚)「驚くほどの事でもないと思うが……」

いや、驚け。普通は驚く。私は驚いています。

川 ゚-゚)「そうか。参考にしておく」

あいっからわず……感動ないわね、クー。

――――汝外へ出よ
――――早起きは三文の得。

昔の人もいやはやなかなか。
あなどれないもので。


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