( ^ω^)ブーンが紫電改に乗るようです
353 名前:( ^ω^)ブーンが紫電改に乗るようです :2006/08/26(土) 20:39:57.81 ID:DoqOJxxF0
保守がてら投下。作者さんきたらやめます


1945年のとある日本の街。
真珠湾攻撃から始まった大東亜戦争。
開戦当初は連日の大勝利を収め、国民は歓喜に酔いしれていたが、
徐々に戦局は悪化し、今ではこの情緒漂う美しい街にまで空襲をうけるまでになっていた。
空襲警報のサイレンが鳴り響き、サーチライトが夜空を照らす。


354 名前:( ^ω^)ブーンが紫電改に乗るようです :2006/08/26(土) 20:46:17.13 ID:DoqOJxxF0
サーチライトの丸い光の先に、銀色の光が反射する。
B-29スーパーフォートレス。かなり多目の搭載量と戦闘機並みの高速。
日本各地の街を焼き尽くしてきた化け物のような爆撃機である。
B-29は機体下部の爆弾倉を開け、中から円筒状の物体を投下する。


356 名前:( ^ω^)ブーンが紫電改に乗るようです :2006/08/26(土) 20:56:08.06 ID:DoqOJxxF0
投下された物体は空中で分解し、さらに細く小さい子弾となって市街地に降り注ぐ。
焼夷弾と呼ばれる、あらゆるものを焼き尽くすためだけに作られたその爆弾は、
木造の日本家屋を容赦無く劫火に包む。
石造りが基本のヨーロッパの家屋と違い、日本の家は火に弱い。
街の通りでは、逃げ惑う人々が焼かれ、煙に撒かれ、倒壊した建物の下敷きになって
死んでゆく。この世の地獄がそこにあった。


357 名前:( ^ω^)ブーンが紫電改に乗るようです :2006/08/26(土) 21:01:10.36 ID:DoqOJxxF0
( ^ω^)「・・・間に合わなかったお」

('A`)「・・・こっちの電探はポンコツか畜生」

真っ赤に燃える街の西から、数機の戦闘機が飛来した。
日本軍のレーダーに反応した敵機の邀撃のために駆けつけた、
近くの海軍基地からの戦闘機隊だった。
深緑の塗装に、赤い日の丸が目立つ。
爆撃のために高度を落とした敵爆撃機に対して高度を取り、雲に隠れて接近する。


359 名前:( ^ω^)ブーンが紫電改に乗るようです :2006/08/26(土) 21:10:36.39 ID:DoqOJxxF0
( ^ω^)「こちら16空部隊。突撃するお」

無線機に向けて報告をする男の名前は内藤上飛曹。
開戦当初からのベテランパイロットで、各地を転戦して今は本土防空の任についていた。

('A`)「落としても落としても飛んできやがる・・・」

操縦席で独り言を呟く男は毒男上飛曹。内藤の相方として共に闘ってきた、
これまた精鋭の1人だった。

( ^ω^)「編隊に告ぐ。これより突撃するお」

内藤は操縦桿を押し込み、機体を一気に急降下させた。
1番機の内藤機にやや遅れて、2番機以降がついてくる。
雲の切れ間から小さな影が飛び出し、燃える街とその上を悠々と飛ぶ
B-29に突っ込んでいく。

362 名前:( ^ω^)ブーンが紫電改に乗るようです :2006/08/26(土) 21:16:38.74 ID:DoqOJxxF0
内藤達の駆る機体の名は「紫電改二一型」。高速重武装の、新型機であった。
水上戦闘機の「強風」を改良した「紫電」に更なる改良を施したものである。

( ^ω^)「おおおおおお!!!!」

わき目も振らずに一直線に銀色の巨人機めがけて突っ込んでいく。
敵はまだ気付いていない。スロットルを開け加速する。
編隊8機は、2機ずつに分かれて各自ばらばらに突っ込む。




363 名前:( ^ω^)ブーンが紫電改に乗るようです :2006/08/26(土) 21:24:45.10 ID:DoqOJxxF0
数百メートル降下したところでやっと敵も内藤達に気付き、防御機銃を撃ち始めた。
夜空に飛ぶ曳光弾は、まるでアイスキャンディーのように見えた。

('A`)「今頃撃っても遅いぜ!行け内藤!」

( ^ω^)「喰らえお!」

内藤は操縦桿の引き金を引いた。
紫電改の主翼に左右2つずつ、合計4つ装備されている20mm機銃が火を吹いた。
攻撃できる数少ない機会には、投射できる全ての火力を叩き込む必要があった。
そうでもしないと、この恐ろしくタフな4発爆撃機は少々の銃撃にはビクともしない。
4つの銃口が同時に光り、曳光弾がB-29の胴体に飛んでゆく。

367 名前:( ^ω^)ブーンが紫電改に乗るようです :2006/08/26(土) 21:44:48.99 ID:DoqOJxxF0
胴体に大穴を穿たれ、B-29が爆散する。
恐らく胴体内に抱えている焼夷弾に引火したのだろう。
派手な火焔と共にバラバラになった残骸が落下していく。
ラッキーヒットだった。

( ^ω^)「やったお!1機落としたお!」

('A`)「まだ敵がいるぜ!次は前のヤツだ!」

機体を引き起こした内藤と毒男は、次の標的に向けて、下から上昇してゆく。
高高度ではまるで歯が立たないが、このくらいの高さなら互角に勝負できる。
ふと周りを見ると、翼から火を吹きながら落ちるB-29と味方機の姿があった。

371 名前:( ^ω^)ブーンが紫電改に乗るようです :2006/08/26(土) 21:55:36.48 ID:DoqOJxxF0
内藤は視線を戻し、速度を上げつつ離脱しようとしている敵機に迫ってゆく。
今度は敵機の防御機銃が内藤達を狙い、弾丸を放ってくる。
もし当たれば、零戦より防御力が高い紫電改とはいえ撃墜される恐れがあった。

( ^ω^)「・・・」

('A`)「内藤!怖いか?」

無線機の向こうから毒男の声がする。
内藤はさらに速度を上げて答える。

( ^ω^)「全っ然怖くなんかないお!!」

それは心からの答えで、決して虚勢ではなかった。
開戦当初こそ、初めて体験する戦争に恐怖し、緊張したものだが、
各地を転戦するにしたがってその戦闘技術と勘は研ぎ澄まされていった。

372 名前:( ^ω^)ブーンが紫電改に乗るようです :2006/08/26(土) 22:04:20.33 ID:DoqOJxxF0
機銃弾が翼のすぐ横を通り過ぎる。
さすがにこのままだと危険と判断した内藤は機体を横滑りさせ、巧みに敵弾を避ける。
20mm機銃の射程距離に入るまでじっと待つ。
それ以前の距離から発射すると、頑丈なB-29には有効打を与えられない。
発動機が唸りを上げて、紫電改を加速させてゆく。

('A`)「エンジンをやれ!」

( ^ω^)「了解したお!」

後方から追いすがるように接近した内藤の紫電改は、敵機の左翼のエンジンに向けて
一斉射撃を敢行した。
アイスキャンディーがB-29の強力なエンジンに吸い込まれていき、
ジュラルミンの破片と油を撒き散らしながら粉々に破壊する。
煙を噴出し、敵機が左に傾く。内藤はそのまま上に逃げて敵の機銃から逃れる。

376 名前:( ^ω^)ブーンが紫電改に乗るようです :2006/08/26(土) 22:12:53.56 ID:DoqOJxxF0
('A`)「とどめだァ!」

続く毒男機が、B-29の左翼に大穴を穿った。
再び左翼で小さい爆発が起こり、左翼がもげる。
片翼を失った敵機はきりもみを起こし、近くの山に激突して大爆発を起こした。

('A`)「おっしゃ、1機撃墜!」

周りを見ると、空戦は既に終わっていた。
内藤は編隊を呼び集める。1機が撃墜されていた。

( ^ω^)「高岡は落ちたのかお・・・」

まだ若い新兵だった。
この日の空戦には勝ったが、こちらの損害は増す一方だった。
これから、いつ来るか分からない終戦まで、彼らは闘い続けていくだろう。

( ^ω^)ブーンが紫電改に乗るようです 完


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