('A`)ドクオが世界ではなく自分に従うようです
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/22(火) 01:24:48.01 ID:5fa0aRuq0

  これは―――小さな物語だ


  私と友人の小さな戦いの物語


  それぞれのさだめの中―――共にもがき


  逃れられぬ死を受け入れるため


  世界を壊そうと決めた


  だが―――後悔は無い


  そうだろう―――?


「ああ……」
「後悔なんて……」
「あるわけ……ない……」

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/22(火) 01:26:14.30 ID:5fa0aRuq0

('A`)「今日は何だ? またディク狩り……?」

(´・ω・`)「いや、リフトの護衛だよ」

(´・ω・`)「端から端まで送るだけ……」

(´・ω・`)「ローディの能無しでも……」

(´・ω・`)「できる仕事さ、ドクオ」

(´・ω・`)「じゃあ、先にいってるよ。相棒」

('A`)「ああ……うん……」


4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/22(火) 01:28:02.02 ID:5fa0aRuq0

ドクオは身支度をして、自分のロッカーを閉めた。

('A`)「さて……行くか……」

自分の剣を小脇に抱えて、ロッカールームの扉に手をかける。
ドクオの剣は飾り気も無く、大きくも無く、切れ味も無い。
扱いやすさだけが取り柄のサードレンジャーの支給品だ。

('A`)「もうちっといい剣欲しいよな……。でも自前で用意するのキツイしなあ……」

ドクオよりも上の階級のレンジャーや部隊に所属する者の多くは自前の武器を用意する。
もちろん上に行くほど支給品の質は上がる。
それでも支給品は支給品。
所詮は上の階級から払い下げられた中古であったり粗悪品であったりすることが多い。
だから多くの者は信頼できる自前の武器を用意する。
しかし信頼できる質の良い武器はもちろんそれ相応の値段がする。
サードレンジャーでキャリアも無い下っ端のドクオが武器を手に入れようと思っても、
結局は支給品と大して質の変わらない粗悪品しか手に入れることができないのだ。


8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/22(火) 01:29:28.16 ID:5fa0aRuq0

('A`)「仕方ないか……。今度、ゼノ隊長にお古とか貰えないか頼んでみようかな……」

('A`)「さて……それよりも、仕事だ。 遅れたらまたショボンや隊長にどやされるし……」

ドクオはぼやく。
愚痴を言っているわけではない。
それは事実で、既に他に望みようの無い現実だからだ。

ドクオはいつもと変わらない、これからも一生変わることが無いであろう仕事の確認をしに隊長室へと向かった。




『1000年前に地上で起きたとされる「災厄」。
これによる世界の環境は一変した。
人々は世界が元に戻るまで、地下に町を作り、そこに住むようになった。
地上への道は塞がれている。
世界が元に戻るまで、何人たりとも通さぬように』

これが世界に伝わるお伽話。
世界は浅ければ浅いほど綺麗で、深ければ深いほどみすぼらしかった。
地底の町の最も深い下層居住区。
ドクオはそこの住人だった。


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/22(火) 01:32:25.05 ID:5fa0aRuq0

隊長室の前に来ると、先ほど見た顔がドクオを待っていた。
ショボンだ。

(´・ω・`)「よう、来たか」

ショボンはフランクにドクオに話しかける。
ショボンは新米の頃から一緒に仕事のパートナーを組んでいる相棒だ。
時々嫌味を言うが、いつも頼りない自分を助けてくれるこの相棒をドクオは嫌いではなかった。

(´・ω・`)「じゃ、行こうぜ。 あんまり待たせると隊長、怖いからな……」

('A`)「あ、うん……そうだな」

二言三言、言葉を交わすとショボンは隊長室に入っていく。
ドクオもそれに続いた。


(´・ω・`) 「ショボン1/64」

('A`)「ドクオ1/8192」

('A`)(´・ω・`)「以上2名参りました!」

隊長席の前に立ったドクオは、目の前のゼノ隊長に向かって敬礼をしながら報告する。


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/22(火) 01:34:05.88 ID:5fa0aRuq0
ゼノ「よろしい……」

ゼノ隊長は眼鏡を抑えながら、手元の任務表に目をやる。

ゼノ「既に聞いていると思いますが、今回の任務について確認しておきます」

レンジャー、つまりは警察のようなものだが、上からの命令で護衛のような任務もある。
今回の任務はレベルE、下から2番目のランク。
移動用リフトで移動し、輸送リフトに同乗し、貨物を警備する。
ショボンが言ったように何度もこなしたことのあるタイプの簡単な任務だ。
もちろん警備する必要のある貨物であるからには、反政府組織の襲撃も考えられる。
しかし、ドクオ達のようなサードレンジャーに任されるような貨物に重要なものは無い。
反政府組織も下調べはしているようで、そんな貨物には見向きもされないのが通例だった。

ゼノ「あなたたちであれば、特に問題の無い任務でしょう」

隊長の綺麗な顔がこちらを向く。 それでも若くして隊長という地位につくゼノ隊長の眼光は鋭かった。
ドクオは剣の指南をしてもらっている関係からその視線には慣れていたが、
他の隊員の殆どは隊長と目を合わせることができない。
しかしショボンは悠然とゼノ隊長の方を見ている。

(´・ω・`)「了解です、隊長。しかし……」

(´・ω・`)「任務の前に、少しお話が……」

('A`)「……?」

ゼノ「いいでしょう。……ドクオ、先に出なさい」

ドクオは話の内容を聞こうとしたが、隊長にそう言われ、ドクオは敬礼をもう一度してから部屋を出た。


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/22(火) 01:40:51.14 ID:5fa0aRuq0
('A`)「なんか……問題あんのかな? ……ショボンに任せとけば大丈夫か……」



(´・ω・`)「隊長……」

ショボンは先ほどまでの態度とは打って変わり、隊長机の上に座って足を組む。

(´・ω・`)「分かっているとは思うけど、俺のD値は1/64……、この値は……」

(´・ω・`)「セカンドやファーストはもちろん……」

(´・ω・`)「メンバーにすら、手が届く資格なんだ」

(´・ω・`)「だから……俺に足りないのは手柄なんだよ……」

(´・ω・`)「こんなチンケな仕事じゃなくてさぁ……もっとハデな手柄がいるんだよね……」

ショボンはニヤニヤと笑いながら、話をする。
ドクオにも時折見せる、嫌味を言っているときの顔だった。

ゼノ「今回の任務は機密性が高いもの……です……。無事に終わればそれなりの報告を……」

ゼノがそう答える途中で、ショボンはゼノの肩を叩く。

ゼノ「……ッ!」

(´・ω・`)「分かってればいいんだ……」

ゼノはショボンの瞳を正視できなかった。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/22(火) 02:15:11.50 ID:5fa0aRuq0

('A`)「あ……」

ドクオが隊長室の前で待っていると、ショボンが出てきた。

('A`)「ショボン、何か……問題でもあったのか?」

(´・ω・`)「なに、特に問題ないさ。 部隊の支給品がなんとかならないかって話をしてただけさ」

('A`)「そっか……」

ショボンの装備は制服以外は全て自前だ。 親が上流階級で装備を手に入れやすいのだという話を聞いていた。
だから、ドクオは部隊のためを思ってやっているであろうショボンを素直に偉いと思った。


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/22(火) 02:19:23.29 ID:5fa0aRuq0

昔からショボンは部隊で一目置かれている。
それは実力の伸び方もそうであるが、なによりそれを裏付けるD値がそれを物語っている。

生まれながらにして決まるD値の高さは潜在能力の高さ。
どんな仕事に就こうが、どのような生き方をしようが、この値が高ければ高いほど上に行くことができる。
逆に低ければ滅多なことでは上に行くことはできない。
ショボンのD値は1/64。 はっきり言ってこの値はドクオにとって神のような値だ。
おそらくすぐにでもファーストレンジャーよりもさらに上の階級へと順々と上がっていくことだろう。

それに比べてドクオのD値は1/8192。 
下層区の中でも低いほうであり、実際の実力、努力が最も反映されやすいレンジャーでも
現在の地位であるサードレンジャーより上に行くことはまずもってできない。そんな値だった。
実際にドクオがレンジャーになれたのもかなり稀有なことである。

だからそんな自分にそんなショボンがよくしてくれていることを嬉しく思っていた。
将来が約束されたショボンに媚びへつらう連中も多いが、
ドクオはいつまでも、せめて時が許すまでそんなショボンのよい友達でありたいと思っている。

(´・ω・`)「じゃあ、行こうぜ」

('∀`)「う……うん」


32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/22(火) 02:20:31.56 ID:5fa0aRuq0

+++リフトポート+++

(´・ω・`)「はあ? またかよ?」

リフト乗り場まで来て、ショボンは声を荒げる。

('A`)「どうかした? ショボン」

(´・ω・`)「またリフトの故障だってよ……。ったく、これだから下層区は……」

(´・ω・`)「このショボン1/64に……リフトを歩いて行けってよ」

('A`)「仕方ないさ」

(´・ω・`)「まあな。仕方ない、さっさと歩いてさっさと終わらせようぜ……」


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/22(火) 02:22:04.72 ID:5fa0aRuq0

ドクオたちはリフトの通り道を、そこに住み着いた野良ディクを退けながら進んでいった。

('A`)「クッ……!」

ディク狩りで慣れていても、たまにドクオは苦戦していた。

(´・ω・`)「ハアッ!!」

そんなドクオとは対称的にショボンはなんなく襲い掛かるディクを対処していく。

(;'A`) 「ハァ……ハァ……やっぱショボンは強いな……羨ましいよ・・・・・」

(´・ω・`)「嬉しい事言ってくれるじゃないの。 でもな、大したことないってこのくらい。 ドクオも頑張ってんだからすぐ強くなれるさ」

(;'A`)「そ、そうだな……頑張るよ」

(´・ω・`)「ああ。 お前が強くなってくれれば俺も楽できる。 頑張ってくれよ、相棒!」

ショボンはハハハと笑いながらドクオの肩を叩いた。



44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/22(火) 02:33:21.09 ID:5fa0aRuq0
ディクっていうのは地下世界の家畜のようなもの
基本的に飼育されたものが逃げて坑道やリフトの道に逃げ込んだものがほとんど
ゲーム序〜中盤のモンスターはほとんどがコレ
食用のものから工作用、兵器としてのものもありそれらをひっくるめてディク、〜用ディクとか言う
武器を使ったり鎧着たりと結構知能が高いものも多い
野良が人襲ったりする場合があるから、定期的にあるいは依頼を受けてレンジャーが討伐したりしてる
ちなみにちょっと表現が分かりづらいけどリフトってのはエレベータのことじゃなくて列車とか場所間の移動に使われるものを指す


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