('A`)がコンビニ店員になったようです。
55 名前:78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/05(火) 00:32:28.19 ID:WzJqG4gm0
 ――――――ξ゚听)ξ「4よ!」―――――――


俺がツンの存在を知ったのは、高校に入学してまもない頃だった。

といっても、俺が一方的に知っていただけであって、
その頃、ツンの方はまったく俺の存在を知らなかったであろう。

と言うのは、俺がツンの存在を知った理由が、
男子の間で交わされる、「何組の何々さんはかわいい」という類の会話で、
ツンの名前があがったからだ。



56 名前:78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/05(火) 00:38:58.92 ID:WzJqG4gm0
こういった情報は、男の間ではすぐさま伝わる。

そんな情報の真偽を確かめるために、
会話に挙がる女の子を実際に見に行くほど、俺は好奇心旺盛な人間ではなかったが、
ツンの場合はたまたま、学校の食堂でその姿を知ることができた。


「あれが4組のツンだぜ。
 噂通りのいい女だよな。」

('A`)「ふーん、あれが・・・・。」


凛とした強さを象徴するかのように釣り上がった、大きな瞳。
フランス人形のような癖のある巻き毛に、筋の通ったツンとした高い鼻。

よほど美的感覚がおかしい人間でない限り、
誰もが美人だと形容するであろう容姿を持った女性。


それが、ツンだった。


57 名前:78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/05(火) 00:41:30.70 ID:WzJqG4gm0
もっとも、どうにかしてお近づきになろうと考えるほど、
俺は身の程知らずではなかった。

あんな美人は、俺とは違った世界の人間。

俺のような人間と、彼女のような美人の人生など、
よほどのことでもない限り、交わるはずはない。


そう、思っていた。


だから結局、彼女のことは記憶の奥深くへと消え、
そのかわりと言っていいのかはわからないが、
俺の頭の中は、始めたばかりの空手のことで埋め尽くされた。


そんな風にして日々を過ごしていたある日、
思わぬところから、俺と彼女の人生は交わり出した。


58 名前:78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/05(火) 00:43:50.17 ID:WzJqG4gm0
その日、俺はいつものように、ブーンと部室へと向かっていた。

他愛もない会話を二人で交わしていると、
突然背後から襲ってきた衝撃に、ブーンが吹っ飛んだ。


ξ゚听)ξ「おーす、ブーン。
     背後を取られるなんて、空手家としてあるまじきことよ。」

(#^ω^)「痛い痛い、鯛のお頭付き。
     ツン! いきなり背後から天空×字拳なんか使うなお!
     まったく・・・そのがさつな性格、どうにかするお!!」

ξ゚听)ξ「おほほほほw
     何とでもおっしゃい! 負・け・犬w」

(#^ω^)「私をあまり怒らせないほうがいい。」


そう言って、ブーンとツンは取っ組み合いのけんかを始めた。



59 名前:78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/05(火) 00:46:18.07 ID:WzJqG4gm0
しばらくしてけんかが収まると、
その様子を唖然として眺めていた俺を、ツンが見た。


ξ゚听)ξ「・・・・・・誰、この人?」

( ^ω^)「僕の空手仲間のドクオだお。」

('A`;)「あ・・・・どうもです。」


その場で起こっている事態が把握できなかった俺は、
ツンに向かって頭を下げながら、間抜けな返事を返した。


ξ゚ー゚)ξ「・・・・・ぷっw
     あはははははwwwwwwwww」

('A`;)「 ?? 」

ξ゚ー゚)ξ「ごめんなさいw
     少しおかしかったから、ついw
     あたしはツンよ! よろしくね!」

そう言って、ツンは俺に手を差し出した。
俺は、とまどいながらも、差し出されたツンの右手を握り返した。


小さくて、柔らかな、暖かい手だった。


61 名前:78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/05(火) 00:47:29.50 ID:WzJqG4gm0
それから、こんな風にしてブーンと歩いていると、
たびたびツンがちょっかいを出してきた。

その流れで、次第に俺は、
ツンとも自然に会話ができるようになり、
いつの間にか、廊下で出会うと短い立ち話をしたりするくらいの仲になった。


そして、高校二年の夏が過ぎ去り、
俺とブーンは部活を止めた。


その後、俺もブーンも落ち込んでいたため、
ツンとのやりとりにも歯切れが無くなり、次第に俺達は疎遠になった。


62 名前:78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/05(火) 00:48:26.59 ID:WzJqG4gm0
部活を止めて、何もすることが無くなった俺は、
放課後になると早々に下校し、制服で街中をぶらぶらする日が続いた。

何もすることもなく、何の意味もない毎日。
そんな毎日に、俺は嫌気がさしていた。

いっそのこと、不良にでもなってやろうかと思い、
夜中にゲームセンターをうろついたりもした。


しかし、高い金を払ってゲームをしても、
あとに残るのは、虚無感と、軽くなった財布の中身だけだった。


63 名前:78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/05(火) 00:50:17.46 ID:WzJqG4gm0
とある休日、何もすることのない俺は、
私服でたった一人、当てもなく街をさまよっていた。

道端にあった自動販売機で、なんとなくタバコを買った。
コンビニでライターを買うと、近くの公園のベンチでタバコを吸う。


まずい。
俺は思わず咳き込む。


こんなまずいもの、何で吸うヤツがいるんだろう。
そう思った時期が、私にもありました。

次第に頭がクラクラしてきたので、
ベンチに仰向けに寝ころんだ。


秋の日差しは、夏のそれとは違って、柔らかなものになっていた。


65 名前:78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/05(火) 00:52:45.61 ID:WzJqG4gm0
そんな柔らかな日差しの下でうとうとしていると、
聞き慣れた声が、俺の耳に入ってきた。


ξ゚听)ξ「あんた、なにやってんのよ。」


ツン? 
そんなわけないよな・・・。


そう思い、俺はその声を無視した。
すると、俺のみぞおちに、強烈な衝撃が走る。
あまりの激痛に、俺はベンチから転げ落ちた。


しばらく悶絶したあとに見上げると、怒ったツンの顔が、俺を見下ろしていた。


67 名前:78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/05(火) 00:54:21.52 ID:WzJqG4gm0
('A`)「お前・・・何するんだよ。」

ξ゚听)ξ「最近あたしとしゃべらなかった罰よ!
     まあ、これでチャラにしてあげるわ。」

('A`)「・・・・・・そいつはどうも。」


そう言って、俺達はベンチに座る。


ちょっと待て。

秋の心地いい晴れの日に、若い男女が公園のベンチで私服で座っている。
これって、もしかしてすごくいいふいんき(←混乱のため変換できない)じゃないのか?


そう思ってドキドキしていると、おもむろにツンが口を開いた。


70 名前:78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/05(火) 01:01:48.43 ID:WzJqG4gm0
ξ゚听)ξ「・・・あんたたち、部活止めたんだってね。」

('A`)「・・・・・・ああ。
   誰から聞いた? ブーンか?」

ξ゚听)ξ「違うわよ。
    大体、あんた達のその様子を見れば、何かあったくらい一目瞭然よ。
    ・・・それにあんたと同じで、ブーンとは最近話していないわ。」

('A`)「・・・・・・そうか。
  俺も最近ブーンと話していないな。
  あいつも、俺みたいにブラブラ街をうろついているのか?」

ξ゚听)ξ「いや、学校から帰ると部屋に閉じこもっているみたいよ。
     昔から何かあると、あいつはすぐに部屋に閉じこもるのよ。
     それでブーンのお母さんが心配して、あたしに相談に来る始末よ。」

('A`)「・・・あいつも、つらいんだな。」


そう言って、俺達は黙った。


71 名前:78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/05(火) 01:03:12.34 ID:WzJqG4gm0
そんな気まずい沈黙が続いた。

すると、ツンがおもむろに立ち上がった。


ξ゚听)ξ「・・・・・・行くわよ。」

('A`)「はぁ?
   行くって何処に?」

ξ゚听)ξ「ショッピングよ!
    落ち込んだときは、ショッピングに限るわ!
    あんた、今いくら持ってる!?」

('A`)「あー・・・財布には五千円、貯金は二万円ってとこかな。」

ξ゚听)ξ「軍資金は十分ね。
   よし、あんたのそのダサい格好を何とかするわよ!」

('A`;)「お、おい、ひっぱるな!」

ξ゚听)ξ「さあ、服を買いにレッツ・ゴー!」


72 名前:78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/05(火) 01:04:14.84 ID:WzJqG4gm0
そんなこんなで、
俺はツンに、無理矢理駅前のショッピングビルへと連れて行かれた。


ξ゚听)ξ「それにしても、あんたの私服ダサいわね。
     何処で買っているのよ、そんな服!?」

('A`)「あー、ウニクロとか・・・。」

ξ゚听)ξ「あんたねー、高校生なんだから、少しは服にお金かけなさいよ!」

('A`)「す、すまんこってす。」


そんな会話を交わしながら、俺はおしゃれな店に連れて行かれた。


74 名前:78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/05(火) 01:06:30.74 ID:WzJqG4gm0
あまりに場違いな空気に俺が緊張していると、
ツンが慣れた手つきで服を選び出し、俺に試着するように促す。

しぶしぶ俺は、渡されたいくつかの洋服を手に、試着室へと向かった。


('A`)「なあ、これ、おかしくないか?」

ξ゚听)ξ「あんた、あたしのチョイスにケチ付ける気?」

('A`)「いや・・・そんなことは無いけど・・・。」

ξ゚听)ξ「あんたは背が高くてスラッとしているから、キレイめな服装をした方が似合うのよ。」

(*'A`*)「・・・・・どうもです。」


こんな調子でいくつかの店を回った。

そして日が暮れる頃には、
俺は両手におしゃれな紙袋を抱えていた。


ξ゚ー゚)ξ「いやー、買った買った。
   これであんたも、少しはマシになるでしょう。」


そう言って、ツンは笑った。


75 名前:78 ◆pP.8LqKfPo :2006/09/05(火) 01:08:18.30 ID:WzJqG4gm0
('A`)「・・・・・・ありがとうな。
  おかげで、少し気分がすっきりしたよ。」

ξ゚听)ξ「べ、別に、あんたのためなんかじゃないからね!
     あたしが買い物したかっただけなのよ!!」

('A`)「・・・・・・お前、何にも買っていないじゃん。」

ξ゚听)ξ「い、今から買おうと思っていたのよ!
     さあ、行くわよ!!」

('A`;)「おいおい、今からかよ・・・。」


結局、俺はその後2時間ほど買い物につきあわされた。
しかし、気分は久しぶりにすがすがしいものになっていた。



不器用な優しさほど、心に響くものであるということを、俺は知った。



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