('A`)がコンビニ店員になったようです。
51 名前:78 ◆pP.8LqKfPo :2006/08/31(木) 23:39:53.30 ID:GTK4CwVR0

 ―――――――( ^ω^)「3だお。」――――――――


滅多にお目にかかれないモノは、それだけで価値がある。


たとえば、虹。
たとえば、パンチラ。
たとえば、ひろゆき。


そして、今日みたいな梅雨の合間の晴れの日も、そんな風に価値があるものだと思う。

そう思っているのは俺だけではないようで、
今日の街は、いつもより多くの人で賑わっていた。


そんな街中を、俺は原付で走っていた。


52 名前:78 ◆pP.8LqKfPo :2006/08/31(木) 23:42:11.24 ID:GTK4CwVR0
運転免許は持っていたけれども、車はおろか原付さえも俺は持っていなかった。

悲しいことに、車の助手席に乗せる相手なんか俺にはいないし、
俺の行動範囲は、そんなに広くはない。
それに、のんびりと景色を眺めながら歩くことが、俺は好きだった。


そんなわけで、車も原付も、たいして俺の興味を引くものではなかった。




54 名前:78 ◆pP.8LqKfPo :2006/08/31(木) 23:44:00.75 ID:GTK4CwVR0
原付を手に入れたのは、ほんの些細なことがきっかけだった。
コンビニの朝番のパートのおばちゃんが、いらなくなったからと引き取り手を捜していたのだ。

自分で言うのもなんだが、俺はマダムや年輩の女性にかなりモテる。

深夜から朝番への引継の際のわずかな時間の間に、原付を譲ってもらえるほどに親密になったのだから、
俺がマダムや年輩の女性にモテることは、客観的に見ても事実なのだろう。


パートのマダム達は、俺のことをドッくんドッくんと、可愛らしい愛称で呼ぶ。

この方達があと30歳若かったら、俺の人生はバラ色にそまっているだろう。
しかし悲しいことに、ここ1年間でまともな会話した女性に、40歳以下の方はいない。


すこし、死にたくなった。


59 名前:78 ◆pP.8LqKfPo :2006/08/31(木) 23:48:10.52 ID:GTK4CwVR0
風を切って、俺と麻子(原付の名前)は進む。
景色が、急速に後ろに流れていく。


乗り物は、景色を堪能できないから嫌いだ。
そんな風に思っていた時期が、俺にもありました。


この、風を切る感覚がたまらない。
信号待ちで体から染み出てきた汗が、一度走り出すと一気に引いていく感覚も素敵だ。
そして何より、渋滞でとろとろ走っている車を追い越す感覚が最高だ。

それが錯覚であるにしろ、自分が一番だという気分になれる。


61 名前:78 ◆pP.8LqKfPo :2006/08/31(木) 23:49:35.33 ID:GTK4CwVR0
徒歩で見える景色も、もちろん良い。
でもこの世界には、こんな風に、いろいろな景色があるみたいだ。


山頂からしか、感じ取れない景色。
海中からしか、感じ取れない景色。
ゆっくりとしたスピードからしか、感じ取れない景色。
速いスピードからしか、感じ取れない景色。


実にいろいろな景色があることを、俺は麻子に教えてもらった。
これより速く走ったら、どんな景色を感じられるのだろうか。


今度、バイクの免許でも取りに行ってみようかな。



 戻る | 次へ

inserted by FC2 system