( ^ω^)ブーンはチェッカーになるようです
- 4 名前: ◆0WSi/hiFV. :2006/08/30(水) 12:29:12.81 ID:Dhs65TEO0
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「はあっ……が、あ―――――」
これは幸せな日々を送る、ある初老の男性の話である。
しかし、彼の幸せな日常はこの日を境目に失われてしまった。
彼は、まだ未確認のウィルスに感染したのだ。
そのウィルスとは、とても危険なもので
感染する人間は凶暴化し、親しい人間や・恋人・愛する家族まで『本能的』に殺してしまう。
結局彼は、息子と妻を己の手で殺めてしまった。
12月2日 この事件を発端に
ウィルスは世界に爆発的に広まることになった―――
( ^ω^)ブーンはチェッカーになるようです
- 6 名前: ◆0WSi/hiFV. :2006/08/30(水) 12:31:03.48 ID:Dhs65TEO0
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―――The first story「日常」
陽だまりのように輝く金色の髪、透き通るような白い肌、
そして―――不機嫌そうに歪められた綺麗な顔。
ξ#゚听)ξ「ブーン、貴方は一体何度言ったら分かるのです!!」
早朝 いつもと同じ台詞の怒鳴り声に、隊員たちはもう慣れたというように苦笑いした。
またブーンが何かをやらかしたのだろう。
ツンはブーンがすでに逃げてしまった、と気付きため息を吐きながら
キリキリと痛む胃を抑えた。
ブーンの奇行ですでに何度悩まされたか分からない。
- 8 名前: ◆0WSi/hiFV. :2006/08/30(水) 12:32:17.01 ID:Dhs65TEO0
- (´・ω・`)「まぁまぁ……ところでブーンがまた何かしたの?」
ξ#゚听)ξ「あンの馬鹿、昨日ワクチンも持たずに駆除を……!!」
(;'A`)「お、落ち着いてください、顔が凄いことに」
ξ;゚听)ξ「だ、黙りなさい!……もうっブーンは何処に逃げたのかしら」
ワクチンとは、主にチェッカーに支給される薬である。
感染者を駆除する際にはこれがないと、チェッカー自身も感染する危険があるのだ。
ツンが怒るのも仕方がない。
- 9 名前: ◆0WSi/hiFV. :2006/08/30(水) 12:33:20.19 ID:Dhs65TEO0
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(;^ω^)「ぐふっ……ごーめーんーなーさいおー」
結局男子トイレの個室に隠れていたブーンは、ツンに呆気なく見つかり
ネックハンギングツリーで締め上げられていた。
これを見て隊員達は思うのだ。――――ああ、今日も平和だなぁ。
(;'A`)「ま、まぁ無事だったんだから……」
ξ#゚听)ξ「よくありません!!」
(;'A`)「ひっ」
彼女の怒鳴り声に、ただでさえ気の弱そうな青年はビクビクと怯えている。
あんまり相性の良くない組み合わせのようだ。
(´・ω・`)「ツン、僕のドクオ君が震えてるじゃないか」
その辺にしときなよと宥める男。やたら僕の、を強調していたのは気のせいか。
チェッカーの中でも濃いメンバーばかりが集まったと噂されるこの軍隊。
そんな彼らの朝はいつも騒がしい。
- 10 名前: ◆0WSi/hiFV. :2006/08/30(水) 12:34:39.49 ID:Dhs65TEO0
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(;^ω^)「………今日のツン凄く機嫌悪いおー……もしや女の子の日かお?」
ξ# 凵@)ξピキピキ (((( ^ω^)
- 12 名前: ◆0WSi/hiFV. :2006/08/30(水) 12:36:23.09 ID:Dhs65TEO0
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ξ゚听)ξ「第3・第4分隊は巡視、その他は待機です」
「「はい!!」」
( ^ω^)「うえー……なんで今日は二班も見回りなんだお?めんどいお」
(´・ω・`)「仕方ないでしょ、最近感染者も増えてきてるんだし」
ブーンとショボンは全部で10隊あるなかでの、第3分隊に所属していた。
口では文句をいいながら、自然と慣れた手つきで支度を行う。
隊服に着替え、銃を担いでさあ出発というブーンをドクオが呼び止めた。
('A`)「またツン局長に怒られるぞ。持ってけ」
(;^ω^)「アッー!!ありがとうお!!」
- 14 名前: ◆0WSi/hiFV. :2006/08/30(水) 12:37:33.80 ID:Dhs65TEO0
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(;'A`)「朝にあれだけ注意されたのに、またかよおい」
呆れた顔をしながら、ドクオはワクチンをブーンに投げつける。
ドクオは衛生兵で第2分隊に所属しているため、今日は非番だ。ついでに暇人だ。
(´・ω・`)「ドクオ、行ってくるね。ちゃんといい子にして待ってるんだよ」
(;'A`)「……おう?」
( ^ω^)「変なこと言ってないで早く行くお、この真性」
(´・ω・`)「」
- 15 名前: ◆0WSi/hiFV. :2006/08/30(水) 12:38:52.16 ID:Dhs65TEO0
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ξ゚听)ξ「……はぁ………」
本部からきた資料をまとめながら、ツンはまた無意識にため息を吐いた。
原因はもちろんブーンのことである。
明るくてお調子ものなブーンはいつも見てて心配になる。
仕事は上手くやっているように見えても、注意力や緊張感が欠如しているのか、
いつも詰めが甘く、昨日のような失敗を繰り返すのだ。
ξ゚听)ξ「もう少し……自分の身体を大事にして貰いたいものですね……」
- 16 名前: ◆0WSi/hiFV. :2006/08/30(水) 12:41:20.04 ID:Dhs65TEO0
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ξ*--)ξ「まぁ、彼らしいといえば、彼らしいですが……」
本人の前では照れて絶対に言えない事を言ってみる。
ブーンに恋心を抱いたのはいつからだろうか――――
……いや、そんなことはどうでもいい。どうせ適うことのない恋なのだから。
ξ--)ξ「……はぁ………」
コンコン
自分の世界にどっぷりと浸かっていたツンは、
突然のノックの音に驚いたのだろうか、思わず肩を震わせた。
ξ゚听)ξ「は、はい……どうぞ」
- 17 名前: ◆0WSi/hiFV. :2006/08/30(水) 12:44:55.50 ID:Dhs65TEO0
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そして、目の前の男の姿を確認して、嫌な人が来たものだとツンは頭を抱えた。
( ゚∀゚)「よう、久しぶりだな」
ξ;--)ξ「……せめて電話の一本でも寄越してください、ジョルジュ監視官」
相変わらず、この人は苦手だ。
にやにやと人を小馬鹿にした笑み、全てを見透かしているような目。
そして――――……
(*゚∀゚)「おっぱい!おっぱい!!」
激しい腕振りと共に繰り出されるこの言葉。
思わず殴り飛ばしたくなる衝動を押さえ、グッと拳を握る。
無駄な事をして、自分の首が飛ぶよりはいい。
そう思いながらも、朝より胃の痛みが激しくなったのは気のせいだろうか。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/30(水) 12:49:21.69 ID:Dhs65TEO0
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ξ#^ー^)ξ「と、とりあえず……座ってお話しましょうか」
(*゚∀゚)「ひんぬー!!ひんぬー!!」
―――プチッ
オッパイ!ヒンn・・・・・アッーーー!!!
- 21 名前: ◆0WSi/hiFV. :2006/08/30(水) 12:51:37.87 ID:Dhs65TEO0
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ξ゚听)ξ「………で、ご用件はなんでしょうか?」
( ゚∀゚)「いや、それがな………」
数分前にツンの愛の鞭(?)でボロボロになっていたジョルジュであるが、
いまは人間離れした回復力で元通りに戻っていた。
流石といいたい所だが、その回復力の原因は殴られている最中に触ったツンの胸という情けないものなのだ。
そしてやっと座って話しができる状態まで落ち着いた二人であるが、
珍しく真剣な目つきでジョルジュは口を開いた。
- 22 名前: ◆0WSi/hiFV. :2006/08/30(水) 12:53:16.29 ID:Dhs65TEO0
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( ゚∀゚)「めんどくさい事になったが、実は本部からこの辺りの領地の監視を任された」
ξ゚听)ξ「それは……どういう………?」
( ゚∀゚)「お前だって気付いているだろ?
他の地域と比べてここの感染者の増加は異常なくらい増えている」
ξ--)ξ「………」
( ゚∀゚)「本部のお偉いさんは、感染の原因の謎はここ地域にあると見たんだ。
そこで俺の登場だな。理由無しに、俺がこんなド田舎にくると思うか?」
(*゚∀゚)「だから暫くの間だが よ ろ し く って事よ」
嬉しそうな笑顔を浮かべるジョルジュを前にして、ツンは常備の胃薬を喉に突っ込んだ。
これ以上胃に負担が掛かるのも不味いだろうと悟って。
- 23 名前: ◆0WSi/hiFV. :2006/08/30(水) 12:54:45.76 ID:Dhs65TEO0
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( ^ω^)「………お」
(´・ω・`)「……これは酷いね」
さっきまでは、子供達が無邪気に遊んでいたであろう小さな公園は、
今はまるで地獄のような光景が広がっていた。
ブランコの周囲には、原型が全く分からない肉片が散らばっている。
更にその隣にいた―――筋肉が異様なまでに盛り上がっており、
返り血を浴びて手に包丁を握っている―――感染者の女性を見て、ショボンは軽く吐き気がした。
(´・ω・`)「これはヤバイ事になった。
こうなる事と分かってたらブーンじゃなくて、ギコさんと見回ればよかったな」
(;^ω^)「ちょwwwwひどいおwwww」
(;´・ω・)「ま、冗談はこれくらいにして………そろそろ来るよ」
- 26 名前: ◆0WSi/hiFV. :2006/08/30(水) 12:59:32.96 ID:Dhs65TEO0
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―――突然、周りの空気が変わった。
後ろにいる二人の存在に気付いたのだろう、ゆっくりと振り向いて
女は笑っているような、泣いているような、いや両方なのかもしれない
そんな表情をして吼えた。
「ああああああああっ――――――」
訳の分からない威圧感を肌で感じてショボンは思わず顔を顰めた。
ゆっくりと歩み寄ってくる女に、二人の間で息も出来ないほどの緊張感が走る。
(;^ω^)「……………」
- 27 名前: ◆0WSi/hiFV. :2006/08/30(水) 13:01:47.09 ID:Dhs65TEO0
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(;^ω^)「ショボン、余計なことは考えるなお」
(;´・ω・)「……………!」
二人と女の距離は約十数メートルといったところか。
ブーンとショボンは腰のホルスターに手を伸ばし、銃を抜いてそのまま構えた。
少しの間があって先に動いたのは、
――――信じられない速さでショボンに近づく女だった。
あまりの速さに、ショボンは少し反応が遅れ、銃を撃とうとした頃には
女はすでにショボンの胸に向かって包丁を突き刺そうとしていた。
勢い良く自分に迫ってくる包丁に、ショボンは反射的に横に避けたが、その瞬間にできた隙を女は見逃さなかった。
- 28 名前: ◆0WSi/hiFV. :2006/08/30(水) 13:02:58.43 ID:Dhs65TEO0
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女は少し体勢の崩れたショボンに手を伸ばし、そのまま左腕を引っ張る。
そして思わず前に倒れたショボンの無防備な喉を目掛けて包丁を滑らせた。
(;´・ω・)「……………くっ、」
駄目だ、避けれない―――――
(;^ω^)「ショボン!!」
―――バンッ
しかし、これもショボンの喉を薄く切り止まるだけで終わった。
咄嗟に女に向けて撃ったブーンの弾が、包丁を持っていた腕に命中したのだ。
更に続けて腹に2・3発撃ち込む。
- 29 名前: ◆0WSi/hiFV. :2006/08/30(水) 13:06:34.42 ID:Dhs65TEO0
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突然の痛みに唸り声をあげ、腹を押さえて倒れこんだ女の頭に、ショボンは銃を突きつけた。
――――しかし、撃たない。
(;^ω^)「なにをしているお?早く撃つお、ショボン!」
(´・ω・`)「………ブーン……この人はまだ、助けられるかもしれない」
手遅れだなんて、ショボンも気付いているお―――と呟きそうになったが、
どこか悲願じみたショボンの声に、ブーンは何も言えなかった。
ただ黙って二人を見つめる。
(´・ω・`)「この人は、まだ間に合うかもしれない……!」
- 30 名前: ◆0WSi/hiFV. :2006/08/30(水) 13:19:39.65 ID:Dhs65TEO0
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女が痛みで動けないと確認したショボンは、液体状のワクチンを口に流し込んだ。
いきなり口に変なものを流し込まされたので、女は驚いて吐き出そうとするが、
ショボンの手がそれを許さない。
女が完全に飲み込むのを見て、やっとショボンは口を塞ぐ手をを離した。
しかし、皮肉にも女の身体に変化はなかった。
(´・ω・`)「………手遅れ……だったようだね」
それどころかまだ殺意の篭った女の目を見て、ショボンは悲しそうに微笑んだ。
無駄だったと悟ったのだろう。
- 32 名前: ◆0WSi/hiFV. :2006/08/30(水) 13:23:27.23 ID:Dhs65TEO0
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ブーンは思わず舌打ちし、女とショボンの所へ近づいてそのまま
なんの躊躇いもなく、女の頭に向かって撃った。
「ぎゃ、っ」と思わず耳を塞ぎたくなるような声を残して、女は死んでしまった。呆気ないものだ。
そしてこの小さな空間に静けさが漂う。
(´・ω・`)「………ごめんね」
しばらく俯いていたショボンが静かに呟く。
それが助けられなかった女に向けての言葉なのか、
それとも自分に向けての言葉なのかはブーンには分からなかった。
( ^ω^)「…………」
第一話 完
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