( ^ω^) はあそびにんのようです
4 名前:巻頭言 :2006/09/04(月) 23:29:15.51 ID:p3wKC05J0

 
     戦いに倦んだ者が、女王を望んだのだ!
     だが、見よ、すぐに彼らは戻ってくる。
     星は王にしか降らず、彼らの腕は無限にあるのだから。
 
                             ―― 「問答録」 より




5 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/04(月) 23:30:20.56 ID:p3wKC05J0

 幾重なる天蓋が、夢幻の光彩を編み始めていた。
 薄絹に濾された輝滴は酒と交わり、杯の底で媚態を孕む。
 夜が明けようとしていた。
 黎明を越えて朝日が兆し、微かな呻きと共に、寝台を覆うとばりが払われる。

 ? 「う――…」

 ―― 現れたのは、腺病質な青年の顔。
 茶色く柔らかい巻き毛の間から、下がり気味の眉が覗いている。
 大きくも、おどおどと潤み、落ち着きなく周囲を見渡す緑の瞳。

 呆けた表情をしていた。
 呼ぶべき名前を失ってしまったように、舌先が震える。
 細い指が、今一度とばりに触れた。絹の感触を確かめるように。


6 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/04(月) 23:30:53.99 ID:p3wKC05J0

 ?「……、 は……」
 
 自嘲の溜息が、青年の唇を割った。

 ?「おかしいね…… 知らない名前を、呼ぼうとしたなんてさ」

 掌の中で、くしゃりと絹が潰れる。

 ?「―― 僕は、預言者なんかじゃ、ないのに」

 目を瞑り、青年は、今一度寝台に伏せた。



7 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/04(月) 23:31:59.08 ID:p3wKC05J0

 ◇


 夢を ―― 見ていたらしかった。
 どんな夢かは覚えていない。ただ、手の中に、確かな感触が残っている。

 そっと、拳を開く。
 ……忘れもしないその形。
 術士の証明にして、魔法の発動体。

 己の手から、永久に失われた光 ―― 識者の杖。

 喜びが、くっきりと青年の脳裏に蘇った。
 燃えるような激情がある。
 確かに、手にしたのだ。二度と得られぬと思っていた、あの杖を。
 欲しい。
 欲しい。
 もう一度、あの感覚を ――
 世界の、扉を開く感触を。
 どうしても、味わいたい。


9 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/04(月) 23:33:45.48 ID:p3wKC05J0

 口中に凝った酒気を吐き出し、青年は胸を押さえた。
 ―― 意識の内に、ざらりとした感触がある。
 はっとした。

 脳裏に、何かが過ぎる。
 柱並ぶ回廊。荘厳な壁画。獣臭、血錆、絶叫 ――

 ? 「ッ!!」

 青年は、跳ね起きた。喘ぐ。脳裏に弾けるイメージに、必死に手を伸ばす。
 知っている。 ――知って、いる。そこで、自分は杖を手にしたのだ。
 兆した絵に亀裂が走る。指先が触れ、崩壊が始まる。
 脆い。
 嫌だ。
 壊れないでくれ。

 もっと、見せてくれ。その絵に書かれているものを、僕に――


10 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/04(月) 23:34:26.41 ID:p3wKC05J0

 ? 「待って―― 待ってくれ……!!」

 確かに見た鮮烈が、嗅いだ激情が、消えていく。
 舌根が咽喉に詰まり、叫びを圧迫する。
 額が熱い。詠唱にも似た緊張がこめかみを走り、頭蓋を侵食した。

 感じたのは強烈な慙愧。

 行かないでくれ。まだ、そこに居てくれ。
 僕は―― 僕は、行かなければ。
 伝えるべき事が、「彼」に――

 ?「あ――…、 う、ぅ……ッ!!」

 必死に伸ばした指先が、砂を食む。
 
 ? 「――……!」

 目の奥で弾けた光に、誰かの横顔が写りこみ ――



11 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/04(月) 23:35:27.74 ID:p3wKC05J0

 ◇


 ('e'し 「――…下! 陛下!  どうされました!」

 ―― 揺さぶられ、青年は、目を覚ました。
 酷い頭痛がした。発熱しているのだろうか。体がだるい。

 (´・ω・`) 「大丈夫…… 何でもない、よ」
 ('e';し 「し、然し……」
 (´・ω・`) 「―― 大丈夫。大丈夫です。それより、水を貰えるだろうか……」
 ('e';し 「かしこまりまして―― 今、侍医も共に」

 一礼をして、兵士が去る。 ……それを見届けて、暫く後。
 青年は漸く拳を開き、そして、呼気を止めた。


12 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/04(月) 23:37:07.20 ID:p3wKC05J0

 鮮やかな漆黒が彼の目を穿った。
 一房の黒髪を、握りこんでいたのだ。
 青年の物ではない。それよりも短く、そして硬い。
 花弁のような光にくるまれて尚、烈々たる剣気を放つ ――
 
 (´・ω・`) 「 ―――…… ギ、コ …… 」

 己の口から漏れた言葉を、彼は聞いていなかった。
 唇を噛む。
 魂の奥底から溢流する何かが、今にも体を割って、弾けそうだった。




13 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/04(月) 23:38:18.21 ID:p3wKC05J0

 ◇


 ( ;゚Д゚) 「ッ――…てェッ!!」

 叫びが、朝靄を割る。
 
 ( ゚Д゚) 「おい、何すんだよ!こんな起こし方 ――…?」

 跳ね起きたギコは、ぽかんと口を開けた。怒声が窄まり、訝しげな沈黙に変わる。

 ( ゚Д゚) (ッかしいな……誰かに、毟られたかと思ったんだが)

 後頭部を摩る。ひりひりとする痛みがあった。
 溜息を付き、夜具を跳ね除ける。しみわたるような砂漠の冷気が肌を刺した。
 椰子葺き屋根の隙間から、底冷えのする風と共に、朝日が差し初めていた。

 ここはイシスの東。
 アベ達 ―― まつろわぬ民達の、村落である。
 周囲を切り立った山に囲まれており、入り口は岩山を抜ける洞穴のみ。
 秘された村、なのだろうか。


14 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/04(月) 23:40:16.49 ID:p3wKC05J0

 ( ゚Д゚) (それにしちゃあ、あんまり無用心に俺達を中に入れた……)

 羊布で織られた、硬い帳布を開ける。
 深い霧が村を満たしていた。
 ここにはいくばくかの緑があった。岩山から染み出す水が、下草を茂らせているのだ。
 霧に沈む井戸が見える。地下水が出ているのか、と、ギコは目を見張った。

 ( ゚Д゚) 「ん………?」

 見知った顔を見つけ、足が止まる。

 ( ^ω^) 「ギコ!おはようだお!」
 ( ゚Д゚) 「おう。早いじゃねえか」
 ( ^ω^) 「レーベは漁村だお。バカにしちゃいけないお」
 ( ゚Д゚) 「ハハ、そうだったな。悪い」
 ( ^ω^) 「ま、僕は毎日寝坊してたけど」
 ( ゚Д゚) 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


15 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/04(月) 23:41:34.42 ID:p3wKC05J0

 ( ゜ω゜) 「あおっ!!」

 腿を蹴られて蹈鞴を踏むブーン。

 ( ^ω^) 「なんでだお!!ひどいお!!」
 ( ゚Д゚) 「手加減したんだ、ありがたく思えゴルァ!大体、お前、何で……」
 ( ^ω^) 「ここにいるのか……かお?」

 ブーンが襟元を握った。つられて視線を下げたギコの、目に止まった物がある。
 奇妙な形の首飾りだ。
 それ自体が装飾的な、黒革造りの鎖部分。喉元に覗く緑の輝石 ――
 一介の村人が持つには過ぎた装身具だった。
 ギコの視線に気づいたかどうか。いつものへらりとした笑いを浮かべ、ブーンは頭を掻いた。

 ( ^ω^) 「……ま、若者にありがちな自分探しの旅という奴ですかな」
 ( ゚Д゚) 「ハァ?なんだそりゃ」
 ( ^ω^) 「うはwwww自分で言ってて超きめえwwwwwwwww」
 ( ゚Д゚) 「お前、俺は真面目に……!」


16 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/04(月) 23:43:03.13 ID:p3wKC05J0
 

 | "゚'` {"゚`l 「はは…!朝も早くから、元気がいいな」
 

 びくり、と肩を振るわせる二人。
 果たしてそこに立って居たのはアベだった。
 ゆったりとした白いローブの上から、朱色の肩布を斜めに掛け、腰で一まとめに括っている。
 玉石を連ねた装飾品が、太い首や腕を鮮やかに彩っていた。
 短く刈りこんだ黒髪。通った鼻筋。彫りの深い顔立ちに、笑みが浮かんでいる。
 ―― ほれぼれするほど、いい男であった。

 ( ゚Д゚) 「―― あんたか。丁度いい」

 ギコの視線が尖る。今しがたブーンに噛み付いていた事も忘れ、彼はアベに向き直った。


17 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/04(月) 23:43:54.47 ID:p3wKC05J0

 ( ゚Д゚) 「聞かせてもらおうじゃねえか!イシスの女王に会えない訳ってのをよ」
 | "゚'` {"゚`l 「そう睨むなよ。かわいい顔が台無しだぜ」
 (#゚Д゚) 「―― てめえッ!!侮辱するかゴルァッ!!」
 (;^ω^) 「ギ、ギコ、やめるお!!」

 飛び出しかけたギコを、ブーンが後ろから羽交い絞めにする。
 最も、ブーンの力でギコを押さえるのは至難の業だ。
 あらぶる馬じみて息を吐くギコに、アベが大口を開けて笑い――

 | "゚'` {"゚`l 「―― 女王などいないのさ。イシスには、もう ―― な」

 そう告げた。
 天気の具合を誰何するように、淡々と。



18 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/04(月) 23:45:52.37 ID:p3wKC05J0

 ◇
 

 ( ゚Д゚) 「――…ど…」

 ( ゚Д゚) 「どう言う事だゴルァッ!!」

 踵を返したアベに、ギコが追い縋る。
 ブーンは暫し逡巡したが ―― 結局、彼も、アベの後を追った。

 ( ゚Д゚) 「いないって……そんな訳ねえだろゴルァ!イシスは、代々女王の統治する国だ!
      預言の力は、女にしか ――」
 ( ^ω^) 「預言……?」
 | "゚'` {"゚`l 「ブーン君は知らないようだな。イシスに纏ろう伝説を」

 アベの足取りには迷いが見られない。
 どこかへ、向かっているのだろうか。
 ギコは不信を。ブーンは好奇を以って、アベを見る。
 くっきりとした横顔には、相変わらずの笑みが浮かんでいた。


19 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/04(月) 23:46:36.28 ID:p3wKC05J0

 | "゚'` {"゚`l 「―― 我々の生まれる遥か昔。この砂海に、大規模な魔物の侵攻があってな」
 ( ^ω^) (……あ。この前の、アリアハンみたいだお……)
 | "゚'` {"゚`l 「当時、砂海に居を構う一国でしかなかったイシスだ。大群に対抗する術なぞ、無かった」

 だが、とアベは続ける。
 彼らが絶望の淵に沈んだ時、一人の女が現れたのだと言う。
 彼女は告げた。
 東からの風吹きし時、異形を払う笛が鳴る。
 死者の丘より兆す影が、奴らの墓標となるだろう ―― と。

 ( ^ω^) 「預言……かお」
 | "゚'` {"゚`l 「そうだ。未だにイシスじゃ一番人気のサーガだぜ。
         彼女は痩せこけた老婆だったとも、うるわしの美女だったとも伝えられている。
         女が一人じゃなかった、とする歌もあるが ――閑話休題」


20 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/04(月) 23:48:18.38 ID:p3wKC05J0

 女の言葉を、王は最初信じなかった。
 当然だ。どこの馬の骨とも判らぬ者の提言に従う王など、何処にいよう。
 が ――
 状況は切迫していた。
 戦は既に消耗戦。兵は日々減り、何より田畑が焼かれてしまう。不毛の地において、これは死を意味した。

 連戦の末、勇壮な将軍達が命を落とすにあたり、遂に王は決意する。 ―― 預言に、従う事を。
 彼は賭けたのだ。
 自分の命を。砂に生きる、全ての民の命を。
 どうせ死ぬならば、己の剣で異形に一矢でも報いたい。その気持ちもあったのかもしれない。

 | "゚'` {"゚`l 「死者の丘は砂海の中心。全ての生物が死に絶える、試練の地だ。
         時期的に、東からの風が吹く事などまれだった。
         王が機を違わずに風に乗れたのも、その所為かもな」

 預言の通りに、王は砂海に打って出たとアベは言う。

 | "゚'` {"゚`l 「男は度胸!何でもためしてみるものさ」


21 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/04(月) 23:51:30.79 ID:p3wKC05J0

 | "゚'` {"゚`l 「騎兵は僅かに千。丘に到着した時には、半数以上が死んでいたが ―― 」
 ( ^ω^) 「……が?」
 | "゚'` {"゚`l 「黄昏が長く、王達の影を伸ばしたその時だ。王の耳に、微かに笛の音が響き……
         直後だよ。眼下に広がる乾海に ―― ”流砂”が起こったのは」

 異形達が飲み込まれていく様を、王はどのような気持ちで見つめていたのだろうか。
 静寂の乾海は貪欲に荒れ狂った。魔の者達を食み、啜る。
 供宴が終わるまで、それ程の時間は掛からなかった。

 ( ^ω^) 「笛の音ってのは、一体何だったのかお」
 | "゚'` {"゚`l 「さあな。風の音だとも、鳥の鳴き声だとも言われている。
         吟遊詩人なんかは、”時告げの鳥”が王に預言を齎したなどと言っているがね」

 ともあれ、王は ―― 賭けに勝った。
 富めるイシスの歴史はそこから始まる。
 王は滅ぼされた村落の救済に尽力し、結果、砂の民の忠誠を得た。
 彼らの殆どはイシスに下った。また、そうしなければ生きてゆかれなかったとも言える。
 かくしてイシスは、乾海を統べる大国となったのだった。


22 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/04(月) 23:53:26.57 ID:p3wKC05J0

 ( ^ω^) 「何だお、その勝ち組っぷりは……」
 | "゚'` {"゚`l 「富国統べる賢帝。傍から見たら確かにそうだ。だが ―― 強国ともなれば、
         避けては通れん道がある。何だと思う」
 ( ^ω^) 「おっおっおっ……」

 賢帝 ―― 賢王。ロマリアの、二人の王の姿が脳裏に浮かぶ。
 ブーンは、思わず声を張り上げた。

 ( ^ω^) 「覇権争いだお!!」
 | "゚'` {"゚`l 「ご名答。 ―― 王は、弑逆されたのさ」
 (;^ω^) 「、、 だ、だけど、それと、女王様と、どういう関係があるんだお?」
 | "゚'` {"゚`l 「……王は予測していたんだろう。神殿に遺言を託していたんだ。
         イシスの王は神々に認めらるるべし ――」
 ( ^ω^) 「お……?」


23 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/04(月) 23:56:35.10 ID:p3wKC05J0

 アベの言葉を次いだのは、ギコだった。

 ( ゚Д゚) 「王は預言者から授かってたんだよ。"星降る腕輪"をな」
 ( ^ω^) 「……星降る腕輪?」
 ( ゚Д゚) 「ああ。時間を司る神の力が宿ってるんだと。で ―― その腕輪は、女にしか嵌められねえ」
 ( ^ω^) 「どう言うことだお」
 ( ゚Д゚) 「―― 腕輪が持ち主を選ぶんだゴルァ。
       資格無しと判断されれば、腕輪はどうやっても装備できない」

 ( ^ω^) 「わかったお!!イシスの王になるには、その腕輪を嵌められなきゃ駄目なんだお?」
 ( ゚Д゚) 「ああ。そして、その腕輪は……」


24 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/04(月) 23:57:14.19 ID:p3wKC05J0

 アベの足が ―― 止まった。
 いつの間にか、村の外れまで来ていたらしい。
 勢い込んで説明していたギコが、はっとして口を噤む。

 五つの巨岩に囲まれた、小さな石造りの建造物 ――
 祠が、彼らの眼前にあった。

 ( ^ω^) 「おっ……!!」
 
 息を呑むブーン。
 祠の入り口を守るように、二人の男が槍持ち佇んでいた。
 彼らはアベの姿を見ると一礼し、その侭 ―― 叩頭したのだ。

 ( ゚Д゚) 「ア、アベ……あんた」
 ( ^ω^) 「もしかして、アベさんは偉い人なのかお……?只者じゃないとは思っていたけど」
 | "゚'` {"゚`l 「嬉しい事言ってくれるじゃないの」

 雄雄しく笑うアベ。
 だが、ギコは気づいてしまう。
 くろがねにも似たアベの瞳は ―― 笑んでなど、いなかった。


28 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/05(火) 00:15:51.45 ID:nWPEddQF0

 | "゚'` {"゚`l 「さて、ギコ。君は女王に会いたいと言っていたが ――」

 ぞくりと背筋が震える。
 アベの言葉を聞くのが恐ろしい。
 何としても、女王には会わねばならないのに ――

 | "゚'` {"゚`l 「その言葉に、偽りは無いか」
 (;゚Д゚) 「ッ――、、」

 得体の知れないおぞけが、ギコの臓腑を圧していた。
 嫌だ。
 祠の中に ―― 入りたくない。

 恐怖に理屈などない。
 自分が何を恐れているのかも分からぬままに、ギコは歯を食い縛った。


29 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/05(火) 00:16:42.41 ID:nWPEddQF0

 ( ^ω^) 「ギコ……」

 案じるブーンの声。
 それが、少年の背を押した。
 あるいは負けん気や見栄、意地だったかもしれない。
 何れにせよギコは頷いた。べたつく不安を払うように、力強く。

 ( ゚Д゚) 「……、勿論だゴルァ!」
 | "゚'` {"゚`l 「その言葉を、待っていたよ。さて、ブーン君……君は、どうする」

 アベの手が帳に掛かる。
 きょとんとするブーン。唖然としたのは、ギコも同じだ。

 ( ^ω^) 「おッ…?僕?」
 (;゚Д゚) 「ブーンは関係ねえだろゴルァ!こいつには ――」
 | "゚'` {"゚`l 「ところが、それじゃあ収まりが付かないのさ」

 | "゚'` {"゚`l 「ブーン君も共に来るか、女王に会わぬか。二つに一つだ」
 ( ^ω^) 「何だかわかんないけど、ギコは女王様に会わなきゃいけないんだお?なら……」
 ( ゚Д゚) 「――ま、待て!」



30 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/05(火) 00:20:35.26 ID:nWPEddQF0

 ギコは気づいた。
 気づかぬ方が、おかしい ――

 ブーンとゆくか。
 女王に会わぬか。
 二つが等号で繋がる筈は無い。

 ( ^ω^) 「なら、僕もいくお!」

 ”この祠の中に、女王がいるのでなければ ―― ”

 ( ゚Д゚) 「アベッ、お前一体 ――… !!」

 鞘走りが、止まる。
 二つの槍刃が正確に、ギコの喉元に突き付けられていた。

 ( ゜ω゜) 「ア、アベさん……!?ちょ、ギコ……! どう言う事だお!!」 

 剣柄に手を掛けたまま、ギコは動けない。
 右に飛ぶ。左に転げる。 ―― どうあがいても、槍刃からは逃れられそうにない。
 

34 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/05(火) 00:56:22.12 ID:nWPEddQF0

 ギコの双眸が烈々と燃え上がった。
 彼は気づいていなかった。己の萎縮を、怒りで誤魔化している事を。
 牙を向く。アベに食って掛かる。
 それらは全て、帳の中に居る者から目を逸らそうとして、為された事だと ――

 ( ゚Д゚) 「畜生 ―― こいつを退けろッ!」
 (;^ω^) 「あうあう……!」

 柄を握る手が、細かく震える。
 ―― その時だった。

 ? 「―― 待っていました、ギコ ―― そして、ブーン」

 祠の中から、細く ―― 囀りが、聞こえたのは。


35 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/05(火) 00:57:50.78 ID:nWPEddQF0

 | "゚'` {"゚`l 「……”女王”……」

 アベの問いかけは、低かった。

 ? 「かまいません ―― さあ、ギコ。おいでなさい。聞きたかったのでしょう、貴方は ――」
 (;゚Д゚) 「う……、、 あ……、、」

 膝が笑うのを、ギコは止める事が出来なかった。
 
 ? 「託宣者 ―― ガイアの剣。精霊の加護、失われた秘蹟 ―― バラモス城までの、」

 帳が、音もなく開かれ ――

 ? 「―― 道のりを!」

 ”それ” が、姿を顕す。


36 名前:第二章 王と預言者 :2006/09/05(火) 01:02:17.45 ID:nWPEddQF0

 ( ^ω^) ゚Д゚) 「ッ――……!!」

 まつろわぬ民達の村に、絶叫が響く。
 嗚咽と叫喚が黎明の空を切り刻み、おぞけを一杯に滴らせ ―― 長く、岩肌を震わせた。

 (続く)



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