( ^ω^) はあそびにんのようです
4 名前:プロローグ :2006/08/29(火) 23:57:55.59 ID:gDdNqHKc0

 川゚−゚) 「……報告は、以上です」

 情感のない女の声を、弾ける水音が遮った。
 鍾乳石から滴る地下水だ。
 青に浸漬される洞窟内 ―― つめたく冴えた空気に、兆すものがある。

 むせかえるような、獣の臭気である。
 そまつな蝋燭の燃え立つ臭いが、洞穴の一部に充満しているのだった。

 ?「…… なるほど。武王を狂わせた、大臣かよ…… どう思う」

 女の述懐 ―― その余韻が消えた頃、次いだ響きが炎を揺らした。

 川゚−゚) 「…… 常人なれば、あの包囲網を抜けれはしません。 高位の魔道士か、あるいは……」
 ? 「魔、と?」
 川゚−゚) 「……はい」


5 名前:プロローグ :2006/08/29(火) 23:59:47.06 ID:gDdNqHKc0

 首肯に応えたのは長い溜息。
 爪隠す猫の密やかさで、"影"が目を細めた。

 仕草のひとつひとつが、奇妙に気配を感じさせぬ影だった。
 顎を撫でる手は細い。その五指全てに指輪が嵌っている。
 炎にてらりと濡れた銀は、互いの尾を噛む蛇の意匠を施されていた。

 僅かに枯れた声は、低い。それが殷々と洞穴に響く。
 常人のものではなかった。たとえて言うなら、魔に近い。

 ? 「奴ばらめ、動き出したか」
 川゚−゚) 「は……」

 しばしの逡巡がクーをまさぐる。この女傑には珍しい煩悶であった。
 赤い舌先が唇を湿らせる。秀麗な眉が微かに寄る。

 川゚−゚) 「……、 そして、」

 意図せずして、それは囁きになった。

 川゚−゚) 「カンダタも ――」


6 名前:プロローグ :2006/08/30(水) 00:00:27.82 ID:E3HIbidn0

 その語尾が、消えるか消えぬかのうち――
 クーの肌が、ふつりと泡立った。

 静寂が訪れた。空気が寒々しく凍えていた。
 無機物が恐怖を感じる事があるか。
 この瞬刻は、是であろう。
 地下水の滴りすらも慄き、呼気をとめたかに見えた。

 ―― 否。

 クーは、ふ、と息を吐いた。吐いて、踵に力を込めた。
 ばりばりと音がして、足裏が地から "外れ" た。
 薄氷が、蜘蛛の巣にも似た網目を以って ―― 実際に洞内を覆っていたのだった。

 霜裂くクーの動き。そこに影の笑みが被さる。
 小さく、あえかな笑いだ。


8 名前:プロローグ :2006/08/30(水) 00:02:49.36 ID:E3HIbidn0

 ? 「…… 取り乱した。すまんな」
 川゚−゚) 「…… いいえ」
 ? 「もう、ゆくかよ……」
 川゚−゚) 「はい……」

 クーの一礼は長かった。
 青い闇に満たされた、お互いの感情を呻吟するように。

 影が、たっぷりと丸い、己の腹を撫でる。
 慈しむような愛撫が、ふと止まり ――

 ? 「 ―― あれは、まだ我らを縛るか ―― 」

 瑣言である。
 既に背を向け、歩き出していたクーに届いたかどうかは判らない。
 女の歩みは乱れず、その背はすぐに洞穴の闇へと消えた。後には獣脂の臭気が漂うばかりである ――



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/30(水) 00:03:22.42 ID:E3HIbidn0



 
        draboon quest V  ―― 砂海の預言者 ――







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