( ^ω^)ブーンが魔獣使いになるようです。
45 名前: ◆vAq8uG9T0I :2006/08/23(水) 01:03:27.50 ID:VV76Yt9mO
ああ、またあの男が来た

何回嫌がらせをしてもここに来る

魔獣を連れては行けないと言ったら、一人で依頼をこなして

男はこの依頼を受けれないと言ったら、女装して依頼をこなして

いつもあの男は嫌がらせをしても、依頼をこなしてきた

今度こそ成功したと思ったのに

やっぱりあの男はここに来た

『ある受付の日記』


第2章―初陣―

46 名前: ◆vAq8uG9T0I :2006/08/23(水) 01:14:56.29 ID:VV76Yt9mO
ギルドの中は本部とは違い寂れていた。
全身をローブで包んだ男と何かブツブツ言っている男がいるだけだ。
そして、壁には蜘蛛の巣が張り、部屋の端ではネズミが鳴いている。

( ^ω^)「汚い部屋だお。それにこの部屋、臭うよー!」

( ,,゚Д゚)「お部屋の臭いに……って、何言わせるんだゴルァ」

そんな、やり取りをしながらギコは壁に掛けてあるボードに近付き、
それに貼り付けられた沢山の紙の中から一枚を勢いよく引き抜いた。
まだ、内藤は襟を掴まれ引きずられている。

( ,,゚Д゚)「この依頼を頼むぞゴルァ」

ギコは引き抜いた紙をカウンターのような所に叩きつける。

47 名前: ◆vAq8uG9T0I :2006/08/23(水) 01:26:20.49 ID:VV76Yt9mO
<ヽ`∀´>「だから、この依頼は同伴がいないと受けられ……」

受付であろう男がめんどくさそうに答える。

( ,,゚Д゚)「ほら、俺の相棒だゴルァ」

ギコはその男の言葉を遮り、内藤をその男の目の前に出す。

(;^ω^)「こ、こんにちはだお。」

<ヽ`∀´>「…………」

非常に気まずい空気が受付と内藤の間に流れる。

( ,,゚Д゚)「何か文句あるかゴルァ」

空気を変えるかのようにギコが言葉を発する。

<ヽ`∀´>「でも、コイツ魔獣使いじゃないニダ」

ギコの言葉に対し、受付は冷静に返す。

( ,,゚Д゚)「同伴者が魔獣使いじゃないといけないなんて、お前は言ってないぞゴルァ」

3 名前: ◆vAq8uG9T0I :2006/08/29(火) 21:55:52.61 ID:/5L3DmJqO
―――街の外れ―――

そこには他の街や村に行く人のための移動手段が沢山あった。
馬車のようなもの、大型の二足歩行の鳥を調教したもの、とにかく様々だ。

( ,,゚Д゚)「さて・・・どれにのるか・・・」

ギコはアゴをさすりながら呟く。
内藤は鳥や馬を子供のような目で眺めている。

( ,,゚Д゚)「よっし、今日はあれに乗るかゴルァ」

ギコは大声を出し、再び内藤の後ろ襟を掴む。

(;^ω^)「いっ、いきなり何だお!?」

( ,,゚Д゚)「あれに乗るんだゴルァ」

ギコは馬車を指差し、間抜けな声を出す内藤を制した。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/29(火) 21:58:37.15 ID:/5L3DmJqO
ギコはそのまま馬車に近付き、馬車の持ち主と世間話を少しした後に
料金を払い、馬車に乗り込んだ。

馬車の中は当たり前と言えば当たり前なのだが簡素な作りで、両側に
椅子のようなものがあるだけだ。
ギコは内藤をその椅子の上に放り投げる。

( ^ω^)「痛っ、もっと優しくして欲しいお」

( ,,゚Д゚)「ゴルァハハハ、スマンな」

そうこうしている内に馬車がガタガタと音を立てながら、動き出した。



7 名前: ◆vAq8uG9T0I :2006/08/29(火) 22:07:17.46 ID:/5L3DmJqO
( ^ω^)「おっおっ、動き出したお」

内藤はそう言いながら、せわしなく首を動かしている。
まるで、鶏のようだ。

( ,,゚Д゚)「こういうのは初めてなのかゴルァ」

( ^ω^)「そうだお」

内藤は首を動かしながら答える。

( ,,゚Д゚)「お前、見たところイルフェナの人間じゃないようだが、どうやって
      イルフェナに来たんだゴルァ」

( ^ω^)「歩きで来たお」

( ,,゚Д゚)「へぇー(今時、歩きとは珍しい奴もいたもんだ)」

ギコが物珍しい顔で内藤を見たが、内藤は気付く様子すらない。

( ,,゚Д゚)「こっちに来る途中で魔獣には会わなかったのかゴルァ?」

( ^ω^)「・・・・・・」

質問を無視するように、内藤は急にうつむいた。

9 名前: ◆vAq8uG9T0I :2006/08/29(火) 22:12:30.73 ID:/5L3DmJqO
( ,,゚Д゚)「どうしたんだゴルァ?」

ギコがそう内藤に聞くと、内藤は首を重々しく上げた。

(;´ω`)「・・・気持ち悪いお・・・」

内藤の顔は生気を失っており、今にも限界を迎えそうだ。

( ,,゚Д゚)「酔うの早っ!早く横になるんだゴルァ」

ギコは内藤の上半身を支え、椅子に寝かせる。

(;´ω`)「気持ち・・・悪い・・・お・・・」

内藤の顔がどんどん青くなっていく。

( ,,゚Д゚)「どうしたものか・・・寝られそうかゴルァ?」

(;´ω`)「無理・・・だお・・・」

ギコの問い掛けに内藤は力なく首を振る。

( ,,゚Д゚)「・・・しょうがない・・・とっておきをしてやるからちょっと体を起こせゴルァ」



10 名前: ◆vAq8uG9T0I :2006/08/29(火) 22:13:56.82 ID:/5L3DmJqO
(;´ω`)「一体・・・なっ!?」

突然、体を起こそうとする内藤の首に鈍痛が走った。

「寝れない奴にはこれが一番だなゴルァ」

そのような言葉を聞いたのを最後に、内藤の意識は闇へと沈んでいった。

14 名前: ◆vAq8uG9T0I :2006/08/29(火) 22:33:51.68 ID:/5L3DmJqO
またこの風景だ。

燃える家

逃げ惑う人々

荒れ狂う炎

そして、闇を写したかのような黒い竜

炎に照らされた闇

その瞳がこちらへ向けられる

心臓を鷲掴みにされたような感覚が身体を走る

動きたいけど、動けない

叫びたいけど、叫べない

ただ、その場にへたりこむだけしかできない

闇が近付いてくる

ゆっくり、ゆっくりと……

19 名前: ◆vAq8uG9T0I :2006/08/29(火) 23:02:33.59 ID:/5L3DmJqO
内藤は建物の壁に寄り掛かりながら辺りを見回す。
まるで、平和をそのまま表したような村だ。
畑仕事に勤しむ人、のんびり草をはむ牛、風のように駆けていく子供。
とても魔獣に襲われているとは思えない。

( ,,゚Д゚)「早く依頼主の所に行くぞゴルァ」

ギコはそう内藤に言い、この村で一番大きいであろう家へ向かって歩いていく。

そして、内藤もそれに続くように重い腰を上げ、服を絞りながらギコについていく。

水をかけたことや、気絶させたことなど色々と問いただしたいことはあったが、
どうせ、ギコには何を言っても笑って返されるので、
内藤はそのことについて考えるのをやめた。

20 名前: ◆vAq8uG9T0I :2006/08/29(火) 23:25:12.75 ID:/5L3DmJqO
ギコが乱暴に家のドアを叩く。
周りの視線が痛い。
こちらを見て、何か話あっている人もいる。
内藤がそちらを向くと、蜘蛛の子を散らしたように人が消えていく。

(;^ω^)(大丈夫なのかお?)

木の軋む音と共にドアが開き、おそらくこの村の村長であろう老人が顔を出し、
内藤達を招き入れた。

流石は一番大きい家といったところか、家の中には高価そうな絨毯や家具があった。
今まで見えなかったが、老人も高価そうな服を着ている。

「さぁさぁ、こちらに掛けてください」

老人の言葉に従い、ギコと内藤は席についた。

21 名前: ◆vAq8uG9T0I :2006/08/29(火) 23:38:25.38 ID:/5L3DmJqO
「さて、依頼の件ですが……」

老人が机を挟んだ向こう側の席に座りながら語りだす。

「あの忌々しい……何と言ったかな?」

( ,,゚Д゚)「スライムのことですか?」

「そうそう、そのスライム」

老人の言葉にギコが付け足す。

「あの化け物共は最初は畑を荒らすだけだったんだが、次第に牛達を襲い始めて
つい先日には村の者を……」

老人の口から発せられる言葉、一言一言から憎悪が感じ取れる。
実際、その顔も怒りで歪んでいた。

23 名前: ◆vAq8uG9T0I :2006/08/30(水) 00:00:22.10 ID:xQm62+0tO
「そこであなた方、魔獣使いに依頼を出したわけです」

老人はスライム達を倒せることが本当に嬉しいのか、動作が大きくなっていく。

「そう、あの忌々しい化け物共をついに倒せるときが……」

老人は席から立ち上がり、腕を上下に動かし、さも楽しそうに喋っている。

( ,,゚Д゚)「あの、そろそろ依頼の方に……」

ギコが控え目に老人に喋りかける。
老人はそれに気付き、恥ずかしがりながら動くのを止めた。

「ああ、すいません、スライム達はここから北に行った所の川の近くに
住んでいるらしいのでよろしくお願いします」

ギコは無言で頷いた。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/08/30(水) 00:16:35.19 ID:xQm62+0tO
( ,,゚Д゚)「そういえば、依頼を出すときに人数を指定しましたか?」

ギコがドアに向かう足を止め、振り返りながら老人に尋ねる。

「いや、そんなことはしてませんが……何か?」

老人は一体、何の事かと言うふうに答える。

( ,,゚Д゚)「いや、何でもないですよ」

ギコは手を上に上げ、ヒラヒラと振りながらドアを開けて外へ出る。
内藤もそれに続く。

「頑張って下さいよー、成功を祈ってますよー」

老人は片手を上げ、ブンブンと振り回す。
相変わらず元気な老人だ。
この老人ならスライムぐらいは倒せるだろうに。


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