( ^ω^)ブーンは目覚まし時計のようです
395 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 03:54:57.37 ID:oyGyWOSX0
(;'A`)「おっかしいなあ・・・ツンちゃん全部荷物開けたのに、なんでみんないないんだ?」


396 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 03:55:55.94 ID:oyGyWOSX0
( ^ω^)「キゴ猫様・・・」

ミ,,゚Д゚彡「なんだゴラァ!今疲れてんだ!話しかけるなゴラァ!」

( ^ω^)「さっきから、僕たちの上をカラスの群れが旋回してるんだけどお・・・」

(´・ω・`)「あ、ほんとだ。でもよくカラスってわかったね」

( ^ω^)「テレビで観たんだお。ついでにそのテレビでカラスは、光モノを好んで巣に持って帰るって言ってたお」

(´・ω・`)「そうそう、例えば宝石とかブローチね」


397 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 03:56:16.12 ID:oyGyWOSX0
川*゚ -゚)「あと・・」

(;^ω^)「腕時計も・・・」

(´・ω・`)「ん?」

川*゚ -゚)「腕時計も光りモノだな」

(´・ω・`)「・・・・」

(;^ω^)「あっ!カラスが一羽こっち来たお!」


399 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 03:56:49.87 ID:oyGyWOSX0
川*゚ -゚)「ギコ、走れるか?」

ミ,,゚Д゚彡「まかせろゴラァ!!」

ギコ猫はそう叫ぶなり、一直線に走り出した。

それに気付いたカラスが上空から追ってくる。

(;´・ω・`)「僕か!?狙いは僕なのか!?」

(;^ω^)「どう考えても腕時計だお!サイズも手頃だしお!」

川;゚ -゚)「やばいな。どう見ても、向こうのほうが速い」

400 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 03:58:22.10 ID:oyGyWOSX0
いかに精巧なカラクリとは言え、所詮はカラクリ。
風を巧みに味方につけるカラスの敵ではなかった。

(;^ω^)「ああ追いつかれたお!!」

(;´・ω・`)「もうすぐ日が暮れるだろ!?大丈夫やつらは鳥目だから、夜になれば――」

川;゚ -゚)「きた!!」

急降下したカラスは、ギコ猫の背中にあるファスナーの中に足を突っ込み、腕時計をつかんだ。

川;゚ -゚)「ギコ!とまれ!」

ギコ猫が急ブレーキをかけ止まる。

が、時すでに遅く、カラスは腕時計をガッシリとつかむと、そのまま空へと舞い上がった。

403 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 03:58:50.42 ID:oyGyWOSX0
川;゚ -゚)「間に合わなかったか!」

(;´・ω・`)「うわあああ!!なんだよ!!離せよ!!!」

(;^ω^)「腕時計!!!」

川*゚ -゚)「ギコ追え!!」

ミ,,゚Д゚彡「ゴラァ!!」

再び加速しだすギコ猫。

404 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 03:59:27.47 ID:oyGyWOSX0
腕時計をつかんだカラスを全速力で追う。

川;゚ -゚)「それ以上、高く飛ばないでくれ!」

砂時計は祈りを込めながら、砂つぶてをカラスめがけて撃つ。

(;^ω^)「当たってくれお!」

目覚まし時計の祈りもむなしく、つぶてはカラスをかすりもしない。

川;゚ -゚)「まだまだ!」

続けざまに1発、2発、3発と打ち込む。

407 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:00:04.16 ID:oyGyWOSX0
(;´・ω・`)「ダメだ・・・あさっての方向へ飛んでいってる・・」

川;゚ -゚)「くっ・・・揺れがあると狙いが定まらない・・・!」

ミ,,゚Д゚彡「揺れずに走るっては、到底無理な注文だぞゴラァ!!」

その間にもカラスは徐々に上昇していく。

(;^ω^)「腕時計!!!」

(;´・ω・`)「くそっ!こんな形でお別れがくるなんて・・!!」

408 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:00:46.65 ID:oyGyWOSX0
川;゚ -゚)「そんなことさせるもんか!イチかバチかだ!とまってくれギコ!」

ミ,,゚Д゚彡「さっきから注文の多い時計だぜまったく!」

ギコ猫は体を横に向け、空気抵抗を上手く利用し止まる。

カラスはどんどん遠ざかっていく。

川;゚ -゚)「一発が当たらないなら、まとめて撃ってやる・・・!」

砂時計は慎重に狙いを定め、残りの砂時計を一気に放射した。

412 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:02:21.73 ID:oyGyWOSX0
砂つぶてはショットガンの弾丸のように、一直線にカラスへと飛んだ。

そしてその何発かは、確実にカラスの体や翼を直撃した。

カラスはたまらずに腕時計をつかんでいた足を離す。

真っ逆さまに落下していく腕時計。

(;^ω^)「ああっ!下はコンクリートだお!!」

川;゚ -゚)「ギコ!!」

砂時計の声を聞く前に、ギコ猫は飛び出していた。

ミ,,゚Д゚彡「ゴラアアアアアア!!!!!」

全力疾走でかけていくギコ猫。

413 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:03:23.78 ID:oyGyWOSX0
(;^ω^)「間に合ってくれお!!!」

川;゚ -゚)「頼む!!」

(;´・ω・`)「だめだ・・・さよなら・・・みんな・・・」

腕時計が死を覚悟した瞬間、ギコ猫の背中が見事に腕時計を捕らえた。

( ^ω^)「やったお!!!」

川*゚ -゚)「よおおしっ!」

(;´・ω・`)「助かったのか・・・!?」

ミ,,゚Д゚彡「どんなも――」

ギコ猫が得意そうな笑みを浮かべて、振り返った瞬間――

猛スピードでやってきた一台の車がギコ猫をはね飛ばした。

416 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:05:23.24 ID:oyGyWOSX0
宙高く舞ったギコ猫は、空中で一瞬停止したかのように見えた。

が、次の瞬間ギコ猫は激しくコンクリートに叩きつけられ、ネジや歯車があたり一面に飛び散った。

( ;ω;)「ああああああ!!!」

川;゚ -゚)「ギコ!!!!!」

418 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:06:33.56 ID:oyGyWOSX0
あたりはすでに暗くなっていた。

虫の鳴き声にまじって、遠くのほうから車のエンジン音が聞こえてくる。

419 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:07:27.84 ID:oyGyWOSX0
( ;ω;)「どうして僕たちは、こんなときにすぐ動くことさえ、できないんだお!?ねえどうしてなんだお!?」

川*; -;)「今私に動く能力を与えてくれれば、もう動くことなど二度と叶わなくてもいい・・・!」

川*; -;)「だから、頼むから、お願いだから私を動けるようにしてくれ・・・!」

( ;ω;)「ギコおお!!腕時計いい!!返事してくれお!!!」

目覚まし時計は必死に叫びながら、体を震わせ少しづつ前進していく。

420 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:08:20.34 ID:oyGyWOSX0
( ;ω;)「お願いだから返事してくれお!!!」

うす暗い道路に、目覚まし時計のベルが悲しくこだまする。

(´・ωー)「目覚まし時計か・・・?僕は・・・なんとか・・大丈夫だ」

( ;ω;)「どこだお!?腕時計どこだお!?」

(´・ωー)「ここだ・・道路の脇の・・・白い花が咲いてるところの・・・」

( ;ω;)「今いくお!!!」

421 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:10:05.67 ID:oyGyWOSX0
川*; -;)「腕時計いるのか!?平気か!?」

( ;ω;)「ああ・・・・腕時計・・・」

目覚まし時計が見つけた腕時計は、見るも無残な姿になっていた。
文字盤がグシャグシャにめくれ上がり、針は根元から折れながら、ピクピクとかすかに動いている。


422 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:12:14.01 ID:oyGyWOSX0
(´・ωー)「はは・・・これじゃあもう、ツンちゃんの腕には、付けてはもらえないね・・・」

( ;ω;)「そんなことないお!ちゃんと元通りに修理して――」

( ;ω;)「腕時計!?どうしたんだお!?返事してくれお!?」

腕時計は静かに動きを止めた。

渇いた大地が一滴の水を飲み込むように、それはあっけなく、ほんの一瞬の出来事だった。

壊れてしまった腕時計は、二度と動こうとはしなかった。

425 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:13:34.80 ID:oyGyWOSX0
( ;ω;)「ひどいお・・・なんで、こんなことになるんだお・・・ひどいお・・・」

川*; -;)「どうしたんだ!?腕時計は、ギコは無事か!?」

( ;ω;)「悲しんでる場合じゃないお・・・ギコを、ギコを助けなきゃ・・・」

目覚まし時計は再び前進し始める。

( ;ω;)「ギコおおおお!!!無事だったら返事してくれお!!!」

だがどこからも返事は聞こえなかった。

428 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:14:57.29 ID:oyGyWOSX0
目覚まし時計の叫びが、静かな道路に響く。

川*; -;)「こんなときに見てるだけしかできないなんて・・・」

砂時計は己の無力さを呪った。
呪って呪ってやがては自分の存在さえも憎くなるくらいに呪った。

429 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:15:44.03 ID:oyGyWOSX0
( ;ω;)「ギコおおお!!!どこだお!!!」

目覚まし時計はそれでも前進する。

( ;ω;)「ギコおおおお!!!ギコおおおお!!!」

( ;ω;)「ギ・・・・・?あ、あれ・・・・」

目覚まし時計のベルと叫び声が、急速に小さくなっていった。


431 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:17:14.26 ID:oyGyWOSX0
川*; -;)「目覚まし!?電池だな!?電池がなくなるんだな!?無理しなくていい!!」

( ;ω;)「や、やめないお・・・ギコを助けるまでは・・・絶対・・・」

目覚まし時計は、ベルを止めることなくギコを探し続ける。

川*; -;)「もうやめろ!!やめるんだ!!そうでないとお前まで動かなくなっちゃうぞ!!」

( ;ω;)「ギ・・コ・・・を探すんだお・・・助ける・・・・・んだ・・・お・・・」

川*; -;)「目覚まし!!!」

434 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:19:33.86 ID:oyGyWOSX0
( ;ω;)「お・・・なんで・・・ベルが・・・・鳴らないんだ・・・お・・・おかしいお・・・変だ・・・・お・・・・・・」


目覚まし時計のベルは、夜の闇へ吸い込まれるようにして、静かに消えた。

そして目覚まし時計自身も動きをとめる。

川*; -;)「あああ・・・嘘だろう・・・」

砂時計だけが、ひとり取り残された。

435 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:21:03.85 ID:oyGyWOSX0
動きを止めた目覚まし時計のそばを、車が一台通り過ぎる。


――おい、いま時計が道路に転がってたぞ。

――なんで道路なんかに、時計があるんだよ。

――大方誰かが捨てたんだろ。

――そうだなあ、今時時計なんて安く買えるしな、昔みたいに大事にしなくなったな、今の奴らは。

――はは、なにじじくさいこと言ってんの。古くなったら、修理するより、買ったほうが安いし楽。常識でしょ。

――そんなもんかなあ・・・・・・。

436 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:22:03.95 ID:oyGyWOSX0
目覚まし時計は思い出していた。

ツンに買われた日のことを――

437 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:22:43.36 ID:oyGyWOSX0
ツンちゃんの顔を初めて見た。

ツンちゃんはまだ中学生だった。

ツンちゃんはやさしい手つきで、僕のネジを巻いてくれた。

なんだかとっても、くすぐったかった。

439 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:23:13.30 ID:oyGyWOSX0
その日から僕はツンちゃんの枕元で、毎朝ベルを鳴らし続けた。

ツンちゃんがどんなに眠そうにしていても、僕がベルを鳴らせば起きてくれる。

――自慢のベルだ。

441 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:24:32.00 ID:oyGyWOSX0
修学旅行の朝も、部活の試合のある朝も、受験の朝も、僕はツンちゃんのためにベルを鳴らした。

でもすぐには起きてくれない朝だってある。

ツンちゃん、早く起きないと、遅刻しちゃう・・・・。

僕は一生懸命にベルを鳴らす。

443 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:26:38.75 ID:oyGyWOSX0
――ツンちゃん、起きて、ツンちゃん・・・。

祈りこめながら、必死にベルを鳴らす。

――あ、ツンちゃんが目を開けた!

――もうひとふん張りだ!

そうやって祈りを込めて、ベルを鳴らせば、ツンちゃんは必ず起きてくれた。

――祈りは通じるんだ。

僕は思う。

強く、強く、祈れば、絶対に通じるんだ・・・。

445 名前:1 ◆piEfblYWC. :2006/08/12(土) 04:28:25.11 ID:oyGyWOSX0
だから僕は、最後に祈る。

どうか、どうかツンちゃんが、これからもちゃんと起きれますように。

僕がいなくなっても、毎朝時間通りに起きれますように・・・。


長い間、僕を使ってくれて、ありがとう。

さようなら、ツンちゃん。


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